2023.06.11 17:00

バリを愛した故・鹿島社長が夢見たリゾート、ラッフルズ・バリ

工事中にコロナ禍となり訪問ができなくなったものの、鹿島氏はホテル内の各部分を図面や写真で確認し、部屋に置かれる皿やアメニティなどの小物は、実際の品を東京に送り、一つひとつを決めていったそうだ。

東京・赤坂の鹿島KIビルには、鹿島氏がほぼ毎日出勤し、これらの意思決定をしていたという部屋が、今は記念室として保存されている。

こうして、鹿島氏のキャリアの集大成ともいうべき、13ヘクタール32棟のヴィラが立ち並ぶこのラッフルズ・バリが完成したのは、土地との出会いから30年以上の歳月を経た2020年7月。日本でオープンの式典の報告を受けた鹿島氏は、長年の夢だったこの開業を心から喜んでいたという。

冒頭に戻る。「ドクターKAJIMAは、このバリ島を心から愛していらっしゃいました。きっと、ドクターKAJIMAの心は、ここにあって、私たちと一緒にこの素晴らしい夕焼けを見てくださっていると思うのです」とスタッフは続けた。

そんな「思いの継承」は、メインダイニング「ルマリ」でも感じることができた。ここでの食を司る、フランス・リヨン出身のビスーズ氏は、フランスの星つきレストランなどで修業を重ねたのち、海外へ。フランス料理の技法を地元の若者たちに伝え、その土地の魅力を最大限に表現する美食を生み出そうと活躍してきた。

19年に着任以来、各地の生産者を訪問し、インドネシア食材を約8割使い、インドネシアの味わいを表現した、地元の人々が世界に誇れる、インドネシアの文化に根ざした料理を生み出している。

そのコースは、日本のオーナーへのオマージュとしての折り紙からスタートする。そこには、ルマリの名前の由来である、家(ルマ)、満月(プルナマ)、太陽(マタハリ)の絵が描かれ、太陽と月の家である、自然と深くつながるコンセプトが説明される。
続いて提供されるのは、地元の味を洗練させた料理の数々。

「カラス風のエビ」は、バリ島の都市・クルンクンの野菜料理をモダンにアレンジしたもの。苦味のある野菜、苦豆や青パパイヤ、四角豆、インゲン豆などを使ってつくる「セロンボタン」を青パパイヤで巻いて表現。サイドには、川エビのクラッカー、地元で人気のカレーパウダー「カラス」風の味を、ターメリックとココナッツ、唐辛子でつくった自家製カレーで再現した。

「クニット・アッサム」は、インドネシアで健康に良いとして愛されている薬草のドリンク、ジャムウにインスピレーションを受け、ジャムウのソルベに蜂蜜を合わせたデザートだ。

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文=仲山 今日子

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