初回は、金融業界を長年牽引し、現在は次代を担う数多くのスタートアップの支援を行う高野 真氏に聞いた。
日本経済成長と起業家育成
──若手起業家育成に力を注いでいる高野さんですが、そのきっかけはなんだったのでしょうか。僕は証券会社でキャリアをスタートさせ、ゴールドマン・サックス、ピムコジャパンの社長などを経て、2014年に正式に金融会社を離れました。そこから先、自分の第二の人生を選ぶ際に、社会還元として何ができるかを考えました。
そこで思い至ったのが、「これからは新規の事業を作らなきゃいけない」ということ。そして、新規の事業は既存の人たちには難しいから、新たに人を育てなきゃいけない。起業家育成だと思ったんです。
僕の古い友人でもあるイェスパー・コール(D4V ストラテジック・アドバイザー)が過去50年ほど、複数の国を調べた結果、人口に占める起業家の割合とその国のGDP成長率に相関関係があることがわかりました。そういう意味では日本で起業家は少ないですよね。
起業家を増やすことがGDP成長率に繋がり、ひいては雇用に繋がっていく。ベンチャー業界ないしベンチャーキャピタル業界は、そこに向かっていかないといけない。この5年ぐらいずっと日本のベンチャー投資が増加傾向にあるので、その点は喜ばしいと思っています。
──日本の投資家と起業家の関係についてはどう思われますか?
まず特徴的なのは、非常にクローズドだということです。投資をする側とされる側、つまりベンチャーキャピタルやエンジェル投資家といった投資をする側と、投資をされる企業、起業家とが仲がいいんです。
これは別に悪いことじゃない。ただ、普通はちょっと違って、投資をした人たちには「スチュワードシップ・コード」(機関投資家の行動規範)があります。つまり、投資家は、投資先に対してきちんとガバナンスを要求し、一定のフレームワークのなかで、ちゃんとリワードをあげる義務があります。