起業家

2023.06.21 09:30

金融のプロに聞く「業界の10年後」 多様性が変革のカギに 

日本はこのコードなしで投資をするので、一種のお友達状態になってる部分が大きい。また、日本では国内でのIPOが最終イグジットとなるのが一般的で、国内で完結してしまっている。これらがある種日本がまだまだグローバルからみて成熟しない要因だと思います。
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日本の起業家に依然グローバルな視点が足りないというのも、今後解決すべき課題です。僕は世界最大の起業家支援組織、エンデバージャパンのボードメンバーとして、積極的に日本国内の起業家を海外に連れて行っています。海外の成功している起業家がやっていることを理解して実践してもらうのが目的です。例えば、アメリカのシリコンバレーがうまくいっているならば、そこで直に見て、学んで、自社に持ち帰ってうまく取り入れていけばいいわけです。

変革の担い手に多様性を

──具体的に、日本のスタートアップ環境はどのようなエコシステム、体制になるのが望ましいのでしょうか。

米誌「ペンション&インベストメント」に掲載された記事が印象に残っています。「アメリカの資産運用を作った30人」を取り上げたもので、英語では「face of changes」というタイトルでした。

資産運用の話なので、米国の金融業界を作った人として、当然運用者の名前が連なるかと思ったら、運用者はたった2人だけだったんです。1人がウォーレン・バフェットで、もう1人は僕の上司だったビル・グロス。残りの28人はというと、レギュレーター(金融監督機関)とか、コンサルタントとか、インデックスを作る人とか、銀行のバックオフィスでオペレーションを支えている人とか、そういう人たちでした。
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では、今の日本のVC業界はどうかというと、ほぼキャピタリストなんです。今後の発展を考えると、キャピタリストじゃない人がちゃんと業界を作っていかないといけない。だから僕がJVCA(一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会)に入って最初にやったのが、コンプライアンス室の設置でした。

VCはアセットマネジメントの一種で、人からお金を預かって運用してるわけですから、コンプライアンスは重要です。でも日本のVCで、コンプライアンスを知っている人はまだ少ない。そこでコンプライアンス推進室を作って僕が室長になり、コンプライアンスハンドブックの作成などに取り組みました。

コンプライアンスの素地ができた後には、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)イニシアティブを始めました。その大きな理由の一つは、日本全体において、ダイバーシティについては少しずつ進んでいると感じるものの、インクルージョンについてはかなり深刻だと感じたからです。

ダイバーシティは実体ベースなので、上場企業の女性役員数、社員数といった数を見ればいい。それは着実に増えています。だからダイバーシティは進んでいると言えます。問題はインクルージョンです。
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インタビュー=中村 優子

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