教育

2023.05.19 17:00

これからの学校は、自分が社会を変えるための場|孫 泰蔵

ただ好き勝手に遊びまくる「学びの場」

学びの意味を変えていくことは、すべての人々に必要です。一生、ラーニングと同時にアンラーニングを繰り返しながら探究を続ける。年齢問わず、みんなで探究するコミュニティが、僕がいまもっている「これからの学校のビジョン」です。

僕もVIVITAというコミュニティをつくり、みんなで楽しく学び続けています。

VIVITAは、7カ国1万人が参加するコミュニティで、「子どもたちによる、子どもたちのためのスタートアップアクセラレータープログラム」を運営しています。参加年齢は8歳から。学校ではありませんが、ある種の学びの場です。しかも、そこには教師もカリキュラムもありません。運営は子どもたち自身で行い、子どもたちが興味のおもむくままに、ただ好き勝手に遊びまくっているだけです。

好き勝手に探究をし続けているだけのVIVITAですが、さまざまなスタートアップや驚きの社会実装が生まれています。

エストニアの11歳の少女ふたりは「バディベンチ」というプロダクトを作りました。丸いモジュールで構成された変形式のベンチで、木や柱のまわりなど、いろんな場所に設置できる。モジュールを横に向ければ、そこに乗って揺れて、遊ぶこともできます。

「どの子も孤独を感じないようになればいいな」という思いで生まれ、仲良くなれるちょうどいい距離になるよう、パーソナルスペースがデザインされたプロダクトです。このバディベンチはエストニアの幼稚園や学校、公共施設に次々と設置されています。言語の違いから会話で距離を縮めることが難しい、ウクライナから避難してきた子どもたちとの交流にも役立っているそうです。

ふたりの少女だけが特別なのではありません。こうした社会実装が、教師もカリキュラムもない、好き勝手に探究するコミュニティからどんどん生まれています。


孫泰蔵◎連続起業家、ベンチャー投資家。「大きな社会課題を解決するコレクティブ・インパクトを創出するためのコミュニティ」を標榜するMistletoe創業者として、社会課題を解決しうる起業家の育成やスタートアップの成長支援に尽力している。

『Forbes JAPAN』2023年6月号の第2特集「イノベーティブ・エデュケーション30 ー子どものウェルビーイングを実現する変革者たち」では、高校、教育委員会、プロジェクトを対象とした「教育」に関するアワードをはじめて開催した。2030年の子どもたちに必要なコンピテンシーである「ウェルビーイング」「エージェンシー」を育むことを軸に選出した30の組織・団体とはーー。本記事は、同特集内で掲載している記事だ。

文=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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