経営・戦略

2023.05.19 13:00

大事なのは、合理を超えた感動で社員を導くこと|人的資本経営トーク#4

Forbes JAPAN Web編集長・谷本有香氏と1000社以上へCHRO機能の強化支援実績を持つLUF会長の堀尾司の2人が、毎回、注目のビジネスリーダーやCHROをゲストに迎えてお贈りする、「人的資本経営の時代を考える」トークセッション。その第4回目が4月12日、Twitterスペース上で開催された。

ゲストはオーダーメイドのウェディングブランドCRAZY WEDDINGの創設者で、現在は環境ベンチャーECOMMITの取締役CBOや神山まるごと高専のクリエイティブディレクターも務める山川咲氏。白熱のセッションは、谷本氏から山川氏への「ビジネスを展開していくうえで何を重要視していますか。勘所のようなものはありますか」という直球の問いかけで幕を開けた。


もう「カリスマ」にはならない

山川氏はそれに「時々の縁・タイミングを逃さないこと、運命に逆らわないことを考えるようにしています」と応じる。そして自らの考えは、幼少期よりリベラルな思想を持つ両親と自然豊かな環境で暮らし、「自分に何ができるのか」「生きるとは何か」という根源的な問いを繰り返す中で、自ずと身についてきたものだと説明。自身の活動を、時代の要請に応えるものだと言い表した。

そうした山川氏の過去や信条について堀尾は、「類まれなる夢力というか、時代を創る力を持っているなと感じます」とコメント。山川氏に、自身の熱意・熱量をリーダーとしてどのように周囲に伝えているのかを尋ねた。

すると山川氏は、「以前は自分自身の燃える思いや熱量に身を任せていましたが、次第に自分と行動を共にしてくれる人、共感してくれる人はもちろん、その対極にいる人の思いや考えも理解して、その人たちの心に火を灯すような環境づくりに主眼を置くようになりました」と回想。

谷本氏は、「リーダーによっては、山川さんのように強いリーダーシップやカリスマ性を持たない場合もあります。そうした中、どうすれば社員のやる気に火をつけて、組織に熱狂を生み出していけるのでしょうか」と問いを重ねた。

それに山川氏は、CRAZY WEDDING時代には自らがシンボルとして社員を鼓舞し、熱狂させて組織を牽引する経営スタイルだったが、同社を退職後にジョインした神山高専のプロジェクトで求められたものは、真逆だったと回答。

「ここ2〜3年は、自分がカリスマにならないように強く意識してきました。メンバーが自分に頼るのではなく、それぞれが主体的に考え、行動できるようになることに力を入れています。自分の役割は、論理に勝る熱量があることをメンバーに気づいてもらい、その仕事が人生をかけるに値すると思ってもらうこと。合理的であるべきビジネスの世界で、合理を超えた感情・感動で社員を動かしていくことを、とても大事にしています」(山川氏)

谷本氏はそうした山川氏の変化を、「数字やロジックで営利を最優先してきた企業が、これから自社の社会的意義を問い直し、どう灯火を照らしていくのか、企業が人的資本主義に移行する上での具体例になり得ますよね」と評価した。
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文=釘崎彩子

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