そう語るのは、地理情報システム「Re:Earth(リアース)」を展開するユーカリヤ代表の田村賢哉である。地理情報システムはGIS(Geographic Information System)と呼ばれ、地理空間をデジタルに表現し、都市や地域の分析や視覚化を可能にする技術である。
そのGISを軸に、次世代データベース技術の研究開発を通じて、様々なアプリケーションを創出し、オープンソースで提供する東大発スタートアップがユーカリヤである。同社CEOであり、地理学者でもある田村の描く未来は段違いにビジョナリーで、その目線は「平和の実現」へと向けられている。
ノーコード、オープンソース、オープンデータ
「Re:Earth」は、Googleマップを自由にカスタマイズできるシステム、と言えばイメージしやすいかもしれない。実際は独自の地図をベースにしているが、それこそGoogleマップや地理院の地図を背景に、高度な情報を付加することもできる。同サービスは、国土交通省が主導する3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」でも活用されている。ユーザーはWeb上のデジタル3D地球儀でさまざまなデータを管理、可視化することができ、例えば災害時の避難ルートやドローンの最適ルートなどをシミレーションすることもできる。
「メタバースやデジタルツインの時代に、国土交通省としても今までの2Dではなく、3Dのマップを整備しないといけない。しかも各自治体のデータを統合して可視化できるデータ管理システムが必要という中で、Re:Earthが採用されました」
Re:Earthの主な特徴は、「ノーコードで誰でも簡単に管理、運用が可能」「オープンソースなので自由に利用・改変・再配布ができ、プラグインで新しい価値を生み出せる」「データベースの連携がスムーズ」というものだ。
「WebAssembly(ブラウザで容易にプログラムを実行できる技術)が進んだことで、高度な解析処理が、ブラウザ上で簡単にできるようになりました。今までであればITシステム会社に依頼して、ゼロからの開発で1000〜2000万円かかっていたものが、Re:Earthを使えば100万ほどのプラグインの開発だけで済みます。オープンソースなので、事業者が自分たちの技術を組み合わせたプラグインを作って販売することもできる。つまり、マーケットも作っていけるんです」
さらにデータベースの連携が容易にできるので、各自治体が協力し合ってスマートシティ化を進めることもできる、画期的なサービスだ。