起業した地理学者が「平和が儲かる社会」を目指す理由

ユーカリヤ代表取締役社⻑ 田村賢哉

自分たちの利益にこだわるのではなく、社会をより良くするために利益を循環させるという高い志を持つ田村。その実現のために、チームではある大きな視座を大切にしている。

「実はユーカリヤでは、明確なビジョン、ミッション、バリューを作っていないんですよ。ウェブサイトに載せる用に、とりあえず定めてはいますけど。大事にしていることはただ一つ、『ビッグピクチャー』ということだけ。その視座のもと『すべての情報を保存することと、保存したい世の中にすること』を大切な価値観として共有しています」

旧石器時代、石版に模様や絵を描いた頃から、人類は記録することに挑戦し続けてきた。「記録したい」という思いは、人間の根源的な欲求であり、100年後や1万年後になり、やり方が変わったとしても、なくならないであろうと田村は説く。

「ただ、すべての情報が保存できるデータベースが生まれた時に、保存したい、記録したい世の中じゃなかったら意味がないですよね。やっぱり後世に残したい世界であってほしいじゃないですか。

そのためには、『平和が儲かる』といいなと思っていて。文字にすると拙いんですけど、平和が儲かる状態になれば、戦争に莫大な資金を投入することもなくなるでしょう。そのために僕たちができることは、いつもやっているジョブが平和にどう繋がるのかを考え、そのための行動を起こすこと。

平和を願うことは、すべての人類で共有できると信じていて。世界の人々がそれを意識して行動し、そのすべてをデータベースとして蓄積して可視化できれば、とてつもない力となる。それこそ平和の実現も夢じゃないと思います」


田村賢哉◎1989年広島県出身。奈良大学大学院文学研究科地理学専攻 修士課程修了後、地理教育の推進を目的としたNPO法人伊能社中の理事長、ダーウィンエデュケーションの代表を経て、2019年 ユーカリヤ代表取締役社⻑に就任。東京大学大学院 学際情報学府文化・人間情報学博士後期課程。日本学術会議地理教育分科会地図・GIS小委員会委員。

文=国府田淳 写真=山田大輔 編集=鈴木奈央

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