2023.05.21

世界の絶景を発信する。「絶景プロデューサー」という生き方

“絶景プロデューサー”の肩書きで、自分が好きな「旅」を仕事にする詩歩さん。

2012年4月にFacebookページを立ち上げたことからその旅路が始まった「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」は10周年を迎えました。そんな節目に、詩歩さんの独立の経緯から、自分の仕事のつくり方、今後の展望まで、「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」を巡る物語を紐解いていきます。

聞き手は、「明日 わたしは柿の木にのぼる」代表の小林味愛です。

「もう1人の自分」に向けて、世界の絶景を届ける

——詩歩さんのInstagramを拝見して、素敵な絶景にいつも癒されています。さっそく「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」の誕生秘話から教えていただけますか?

“ひょんなきっかけ”だったんですけれど、それは、2012年に新卒で就職したインターネット広告代理店の新人研修でした。入社してすぐの新人研修で、当時上陸したばかりのFacebookページをつくって、いいね数を同期で競い合うという課題が出されたんです。

そこで私は、大学時代から旅が好きだったので、自分が楽しく更新できるものとして「旅」をテーマに、Facebookの特徴から文字ではなく画像を軸に、海外の人にも届けられるものとして「絶景」を発信することを決めました。

新人研修の課題として、2012年4月16日にフェイスブックページ「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」を立ち上げて更新をしていたら、研修期間の2カ月でフォロワーが2万人に。そのまま続けていたら、年の瀬には45万人になっていました。当時、日本のFacebookページのフォロワー数ランキングで総合10位以内に入っていたんです。

——すごい!多くの方が共感してくれた理由はどうお考えですか?

一つは、時代に合っていたこと。Facebookが広がり始めた頃で、競合がいなかったので、注目されやすかったことが大きいと思います。今だったらTikTokなど比較的新しいプラットフォームで早くに始めるとそのメリットが享受できるかもしれません。

それから、Facebookページを立ち上げたときに決めたことがいくつかあって、その一つが「もう一人の自分」をターゲットにすること。通勤電車に乗って会社に通う日々、投稿する絶景を見て、いつか旅にいくためにがんばろうと前向きな気持ちになれるかどうかを突き詰めました。

結果、その絶景に行ったことがある人も、いつか行きたい人も、それぞれが想いを乗せてシェアができるように、私の意見は載せずに百科事典のような投稿を心がけようと。写真はもちろん一字一句にこだわって、当時は一つの投稿に2〜3時間くらいかけていましたね。

——そんなに!「死ぬまでに行きたい!」というフレーズもとても印象的ですが、降ってきた感じなんですか?

実際にその1カ月前に死にかけたんですよ。卒業旅行で行ったオーストラリアでキャンピングカーが2回転半してドクターヘリに運ばれて奇跡的に助かった。研修中も怪我が残っていたんですが、その体験から「死ぬまでに行きたい!」という言葉が湧いてきたんだと思います。
次ページ > 例えるならソムリエ

文=徳 瑠里香 撮影=詩歩

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事