2023.05.21

世界の絶景を発信する。「絶景プロデューサー」という生き方

ソムリエのように絶景を発掘し紹介する仕事

——独立の経緯もお伺いしたいんですが、社会人2年目で会社を辞めることに不安や迷いはなかったですか?

独立を考え始めたきっかけは、会社員として働いている最中に1冊目の本『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』を出版したこと。当時は副業が認められてなかったので、個人の活動をすることに制限があったんです。

副業をしやすい会社に転職して、個人の「絶景」活動と二足の草鞋を履いてやっていこうと思っていたんですね。

だけど転職に詳しい人に相談したときにもらった言葉が胸に刺さりまして。「新しい仕事と絶景の仕事、二足の草鞋で半分半分の力でやっていけるほど甘くないよ」、それに「絶景の仕事に本腰を入れる前から、食べていけないと決めつけなくてもいいんじゃない?」と。

お金の不安はあったけど、今は挑戦してみてもいいかもしれない。数カ月やってみてダメだったらまた別の仕事を探せばいい!と独立してから8年が経ち、今に至ります。

——すばらしい!もともと旅がお好きだったとのことですが、旅行会社への就職・転職は考えていなかったのですか?

まったく考えなかったです。

というのも、私は学生時代、日本全国の古墳を巡る旅をしていたんですが、好きだったのは、2000年くらい前に人が住んでいた場所に今、私がいる!というロマンを感じながらぼーっと過ごす時間。

同じ「旅」でも、旅行会社でやることは、私の好きとは相容れないと思っていました。

——「好き」の解像度を上げて「旅」を仕事にされたんですね。独立してから、絶景プロデューサーとして具体的にどんなお仕事をされているのでしょう?

絶景プロデューサーの仕事は、ワインソムリエの絶景版かなと思っています。

数多くのワインを飲んできた知識と経験をもとにさまざまな提案をしていくように、国内外を旅して絶景を見てきた経験から、自治体や企業のご要望に沿って、絶景を見つけて提案する。ほかにも、絶景をテーマに本を出版したり、SNSをはじめメディアでの発信もしています。

——絶景ソムリエなんですね!詩歩さんだから見つけられた絶景、これぞ絶景プロデューサーの仕事!といった具体例を一つ教えていただけますか?

たとえば、愛媛県の絶景を発掘するプロジェクトで、「モンチッチ海岸」という鏡面世界の絶景を見つけました。ボリビアのウユニ塩湖のような景色というとイメージされやすいかもしれません。

地形的な条件が合えば鏡面の世界が見られるはず!とGoogleマップで検討をつけて何度か訪問し、3度目に実際に撮影することができた。県庁の方も、何度も行ったことがあるけどこんな景色を見られるとは思わなかったと驚かれていて、愛媛の方々も喜んでくれて。絶景を見てきた経験があったからこそ発見できた景色だと思います。

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文=徳 瑠里香 撮影=詩歩

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