岸田政権は「新しい資本主義」の下、「スタートアップ育成5か年計画」を策定。今年1月には、スタートアップに10兆円規模の投資を行うことを発表するなど、スタートアップ振興に本腰を入れる姿勢を見せている。しかし、実際にスタートアップ企業で働きたいという人は、国内ではまだ少数派だということが、転職エージェントのキープレイヤーズによる調査で分かった。
同社は5月13日、国内で会社員として働き、転職活動中の20代~40代の正社員(男女)300名を対象に、スタートアップ企業・ベンチャー企業への転職に関する意識調査を実施。それらへの転職に興味があるかを尋ねたところ、「興味がある」と答えた人は2割超(22.3%)に留まり、「興味がない」が約8割(77.7%)を占めた。
興味がある理由として最も多かったのは、「自分の興味が持てる事業内容」(73.1%)で、「リモートワークなど柔軟な労働環境」(65.7%)、「風通しのよい社風・風土」(49.3%)、「成果主義の評価制度」(29.9%)の順番に。
一方で、スタートアップ企業・ベンチャー企業への転職の懸念点については、最多が「廃業リスクが高い」(74.6%)となり、「実力主義の環境で結果を出せるか不安」(56.7%)、「社風に馴染めるか不安」(43.3%)、「給与が下がりそう」(34.3%)の回答が続いた(いずれも複数回答可)。
同社の代表取締役 高野秀敏氏は、以前と比べてスタートアップ・ベンチャーへの転職者が増えている感覚はあるものの、まだまだ企業側の採用ニーズには満たない状況だと説明。
さらに7割超の人がスタートアップ・ベンチャーへの転職について、「廃業リスクの高さ」を不安視していることから、「興味があっても、実際に転職に踏み切れる人は限られてくるのではないかと考えられます。ただ、多くのスタートアップ企業やベンチャーキャピタル、様々な投資家の方のおかげで、成功する企業の特徴や傾向は、完璧ではないにしても少しずつ見えてきているようにも感じています」とコメントした。
経団連副会長の南場智子氏は2021年3月の成長戦略会議で、日本のスタートアップを巡る負の循環について言及。「そもそも起業する人が出てこないこと」をはじめ、スタートアップに人が流れ込まないことや、株式に関する諸制度・慣行、税制などの問題から柔軟な運営ができず、「成功するスタートアップが少ないこと」、さらに「成功したとしても小さくまとまりがちであること」などの課題を指摘し、官民挙げて取り組むべきだとの考えを明らかにしている。
「スタートアップ育成5か年計画」では、柱として「スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築 」や「 スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化」などが掲げられているが、果たしてどれだけ社会全体を巻き込んでいけるのか、行く末が注目される。
参考)
成長戦略会議(第8回)配付資料 南場氏提出資料
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/seichosenryakukaigi/dai8/siryou4.pdf
スタートアップ育成5か年計画(案)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/bunkakai/suikusei_dai3/siryou1.pdf