バイオ

2023.05.16

国産フルーツの品種流出を防げ、画期的なDNA検査を岡山大らが開発

Getty Images

近年、日本国内で育成された果物や野菜の優良品種が海外へ流出。無断で栽培され、産地化することが問題になっている。育成された優良な新品種は日本の農林水産業の発展を支える、貴重な財産だ。

流出の防止策としては、品種の育成者権を保護するほか、税関などの水際で侵害物品かどうかを迅速に判別できる技術が有効になる。しかし従来の方法では検査に時間がかかり、高価な設備が必要になることなどから、現場検査での利用は難しかった。

そうした中、岡山大学学術研究院、農研機構、愛媛県農林水産研究所、ファスマックの研究グループは、「はっさく」「あまなつ」「レモン」など多様な柑橘の品種を簡便かつ迅速に識別できる新たなDNA検査法を開発。

具体的には、レトロトランスポゾンという転移性DNA配列を高速シーケンサーで解析し、柑橘の品種を正確に識別できるDNAマーカーを開発した。さらに同DNAマーカーで増幅したDNA産物を核酸クロマトPAS(CPAS)法で検出することで、簡便かつ迅速にDNA品種識別検査ができる手法を確立。

同手法では、マッチ棒サイズのメンブレンスティックをDNA溶液に浸すだけで、陽性か陰性かを判定する青いDNAシグナルを検出できる。この手法を用いれば、高額なDNA検出機器も不要となり、DNAの品種識別検査を簡便かつ迅速に、税関での水際対策として実施可能になる。

岡山大学学術研究院 環境生命自然科学学域(農)の門田有希准教授は、「このプロジェクトでは柑橘だけでなく、葡萄や林檎、薩摩芋、菊など色々な植物種を対象にDNA品種識別技術の開発を進めています。他の植物でも研究成果が出るよう、引き続き頑張りたいと思います」とコメントした。

プレスリリース

文 = 大柏真佑実

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