2008年の金融危機の新バージョンのようなものだ。債券の利回りの上昇は銀行が保有する既存の債券の価値を低下させ、銀行の財政難に拍車を掛けている。
だが米国外に目を向けると、新興国の銀行は持ちこたえている。西側諸国から制裁を受けたロシアの銀行でさえも倒産していない。これにはAlfa Bank(アルファ・バンク)など、国営ではない民間の銀行も含まれる。
「新興国の銀行では同じようなことは起きていない。われわれは新興国の銀行を調べた。カリフォルニアや西欧で最近起こった出来事に端を発した揺らぎや不安定さは見あたらなかった」と米投資会社Thornburg Investment Management(ソーンバーグ・インベストメント・マネジメント)のポートフォリオマネージャー、ジョシュ・ルービンは言う。
米国の銀行の破綻の全てが、債券損失にかかる評価損によるものではない。Silicon Valley Bank(シリコンバレー・バンク)のようにずさんな運営によるものもある。ブラジルなどの新興国の銀行は、リスクに備えることを学んできた。中南米や東南アジアの多くの国々は、長年にわたる2桁のインフレ、通貨の暴落、ソブリン債務不履行などの苦い経験から学んだ。
世界的に金利が上昇し始めた2018年、新興国の銀行は問題なく乗り切った。たとえ株価が打撃を受けたとしても、銀行自体は健全だった。例を挙げると、ブラジルの銀行Itau(イタウ)の株価は2018年以降26%以上下落しているのに対し、米金融セクターの動きに連動する上場投資信託(ETF)は13.5%上昇している。
また、新興国の銀行は欧米の銀行のように少ない額で大きな取引をしていない。中南米やアフリカの銀行が、ポートフォリオに5倍のレバレッジをかけているため、用意できない巨額の追加保証金に直面している──などという話はなかなか耳にしないだろう。このようなことは、新興国では起こらない。こうした行為は欧米の銀行の問題を悪化させていて、欧米銀が低金利を好むのは信用取引にかかるコストが低いからだ。