新卒初任給は22.6万円(2023年度) 7割の企業が引き上げるも欧米と格差

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ロシアのウクライナ侵攻が発端となった燃料・資源価格の高騰や円安を背景にした物価上昇を理由に、賃上げの機運が高まっている。そうした中、若年労働人口の減少に伴い、売り手市場が続く新卒社員の給与は、どう変化しているのか。民間調査機関の労務行政研究所は東証プライム上場企業の157社を対象に、今年(2023年)4月の新卒入社者の初任給を調査した。

結果を見ると、2023 年度の初任給を前年度から全学歴引き上げた企業は70.7%で、前年度(2022年度)の41.8%から 30ポイント近くアップ。一方で、全学歴据え置きした企業の割合は 26.1%となり、前年度(49.7%)から 20ポイント強ダウンした。

近年の初任給を全学歴引き上げた企業の推移を見ると、21 年度にコロナ禍による業績不振の影響などを受けて17.1%まで低下し、底を打ったものの、22 年度には一転して 40%台まで回復。さらに23 年度は 70%超え、2年連続で大幅な上昇となった。一方で、初任給を全学歴据え置きとした企業の割合は、21年度に74.3%まで上昇したものの、22年度には49.7%、23年度には26.1%まで低下。過去10年で最低となった(※1)

全産業における学歴別の初任給水準は、大学卒22万5686円、大学院卒修士 24万3953円、短大卒19万5227円、高校卒18万3388円(※2)。前年度比の初任給上昇率は、大学卒3.1%、大学院卒修士3.2%、短大卒3.5%、高校卒3.7%だった。

大学卒に絞ると、「引き上げ」が71.7%で「据え置き」が 28.3%。上昇額は最多が「1万円台」(18.6%)で、次いで「5000円台」と「7000 円台)(いずれも10.5%)の順に。平均上昇額は、9523円だった。

Indeedの調査によると、アメリカでのエントリーレベルポジションの平均給与は、年間4万153ドル(562万円)。欧米諸国の初任給に比べ、日本の初任給は低い傾向がある。

日本企業は過去30年ほど、初任給を抑制してきたが、近年、新卒のジョブ型雇用が増えていることで、横並びの原則が崩れ始めている。また、春闘では新卒初任給の引き上げを行う企業も目立った。貴重な若年層の労働力を海外に流出させないためにも、新卒の給与最適化が望まれる。

※1…21 年度以前は「東証 1 部上場企業」、22 年度以降は「東証プライム上場企業」の割合
※2…初任給は原則として時間外手当と通勤手当を除く、諸手当込みの所定内賃金


参照)A Complete Guide to Entry-Level Salaries
https://www.indeed.com/career-advice/pay-salary/entry-level-salary

プレスリリース

文=大柏 真佑実

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