健康

2023.05.19 10:00

長寿地域「ブルーゾーン」に学ぶ、食とウェルビーイングの関係

この事実が意味することは、機能性食品により特定の健康課題に対処するよりも先に、美味しくて栄養バランスのいい食事をとることこそが健康維持のために重要だということです。

スーパーやコンビニで売られている商品や外食メニューを見てみると、そこへのニーズがよくわかります。例えば、「1日に必要な野菜の3分の1が摂れる」「たんぱく質高含有」といった特定の栄養素を補える商品や、「糖質オフ」「カロリーオフ」「減塩」といった現代食では過剰になりがちな栄養素を控えた商品など、栄養バランスをサポートする商品は数多く存在します。

とりあえず「これだけ食べておけば大丈夫」ということで注目されている完全食も登場し、栄養摂取を考えてAIが日々の食事を推奨してくれるのパーソナライズソリューションの検討なども進んでいます。

そんな中、食と健康の分野では、「未病」という概念にますます注目が集まっています。

大辞泉によると、未病とは「東洋医学において、検査を受けても異常が見つからず病気と診断されないが、健康ともいえない状態。放置すると病気になるだろうと予測される状態をいう場合が多い」と定義されていますが、病気ではないものの身体や心に何らかの不具合を感じる場合から、健康だが何らかの漠然とした不安を感じるということまで、まとめて「未病」と表現されていることが多いように感じます。

病気、疾患を解決できるのは医薬品であり、機能性食品では本来「何かしらの不調を治す」ということはできません。しかし、機能性表示食品で表示されるものは、中性脂肪、血糖値、血圧、内臓脂肪、認知機能など、病気・疾患領域に近い状態の機能が上位にランクインしています。

一方で、ウェルネス総合研究所が20代~70代の男女を対象にしておこなったニーズボリューム調査(出典:一般社団法人ウェルネス総合研究所 2022年ニーズボリューム調査)によると、それらの個別の症状ケアのニーズは限定的であり、多くの人は、健康でいたい、若々しくいたい、といった“抽象度の高い健康価値”を求めていることがわかっています。

このことからみても、既存の健康機能対策や、商品コンセプトの打ちだしでは、市場が頭打ちであることがわかるでしょう。

*一般社団法人ウェルネス総合研究所 「ウェルネストレンド白書 Vol.1」ニーズボリューム調査データをもとに作成

*一般社団法人ウェルネス総合研究所 「ウェルネストレンド白書 Vol.1」ニーズボリューム調査データをもとに作成


一般的な生活者が求めるのは、若々しく自分らしく魅力的に生きられる状態になることであり、それを維持すること。それはまさに、ブルーゾーンでのウェルビーイングなライフスタイルを実現することにほかなりません。
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文=藤田康人

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