宇宙

2023.05.15

ついに判明した「クエーサー誕生の謎」が示す我々が暮らす銀河の未来

彼方のクエーサーP172+18とその電波ジェットを描いた想像図(ESO/M. KORNMESSER)

1963年まで、定常宇宙論は物理学を支配していた。宇宙は拡張していて、あらゆる空間と時間でおおむね同様だとする理論だ。オランダの天文学者マーテン・シュミットは、驚くほど遠くに太陽2兆個分の明るさを持つ光源ががあることを発見した。

宇宙で最も強力な天体であり、空一面に輝く非常に明るい光源であるクエーサーは、ありふれたものであることがまもなく発見された。ビーコンとして機能し、定常状態が存在しなかった宇宙最古の時代を研究する手助けとなった。クエーサーは定常状態理論を否定し、ビッグバン理論を推進する役割を果たした。

それにしても、クエーサーとは一体何なのだろうか? どのようなきっかけで、あんなに強力な活動ができるのだろうか? これまでその疑問に完全に答えることはできなかった。

クエーサーは複数の銀河が衝突した結果、発生することが明らかになった。

英国王立天文学会の月報に掲載されたこの新事実は、カナリア諸島のラ・パルマ島にあるアイザック・ニュートン望遠鏡を使って、クエーサーを有する48個の銀河を研究したことで明らかになった。

英国のシェフィールド大学とハートフォードシャー大学の研究チームは、クエーサーを有しない100以上の銀河と比較した結果、クエーサーを有する銀河の外部領域に歪んだ構造があることを発見した。

なぜクエーサーが、銀河の衝突で生まれることになるのか。その新たな説明は以下のとおりだ。

・ほとんどの銀河は、その中心に超大質量ブラックホールがある
・銀河には大量のガスがあるが、そのほとんどはブラックホールの手の届かない場所にある
・複数の銀河が衝突する際、ガスはそれぞれの銀河の中心に向かって押し出される
・ガスがブラックホールによって飲み込まれる直前、おびただしい量のエネルギーが放射線として放出される
・その結果、太陽系ほどのサイズに1兆個の恒星を詰め込んだほどの明るく輝く超高輝度のクエーサーが誕生する
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翻訳=高橋信夫

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