一歩前進、二歩後退?
AIやパーソナライゼーションへの集中的な取り組みや投資にもかかわらず、「パーソナライゼーションの現状」報告書では皮肉なことが指摘されている。すなわち過去1年間で、4人に1人以上の消費者が、パーソナライゼーションが後退していることに気付いているというのだ。これは、データプライバシー規制の強化や、Apple(アップル)によるウェブやアプリのトラッキングをオプトアウトするオプションなどが影響している可能性がある。皮肉なことに、技術的には大きく進歩しながらも、顧客を真に理解しターゲット化する能力は後退しているのである。この懸念を呈しているのはトゥイリオだけではない。CMSWire(シーエムエスワイア)の「2023年版デジタル・カスタマー・エクスペリエンスの現状」報告書でも、パーソナライゼーションの取り組みへの参入障壁を下げるツールが増えているにもかかわらず、実際のパーソナライゼーションの成熟度は依然として低いとの意見が一致している。実際、シーエムエスワイアの調査では、パーソナライゼーションの取り組みから便益を得ているブランドはわずか18%であり、昨年の20%から低下している。これはトゥイリオのレポートとも符合している。企業の半数がパーソナライゼーションのための正確なデータの取得が課題であると感じており、昨年に比べて増加しているのだ。
パーソナライゼーションに利点がないわけではない。明らかに、顧客はそれを求めている。トゥイリオのレポートによれば、半数以上の顧客がパーソナライズされた体験を受けた後にリピーターになると述べており(昨年比7%増)、6割以上の経営陣はパーソナライゼーションの取り組みによって顧客の定着率が向上したとしている。さらに、7割近くが来年に向けてパーソナライゼーションへの投資を増やす予定だと答えている。先ほど述べたように、そこには何らかのギャップが存在している。しかし、確かなことは、パーソナライゼーションとAIが今後も消えることはないことだ。
パーソナライゼーションの未来
技術者として最も興味深いのは、現在のパーソナライゼーションの状況だけでなく、将来どのように進化していくのかを考察することだ。トゥイリオのレポートに基づくと、企業はパーソナライゼーションプロセスの簡素化やそこから得られる洞察を促進する技術への投資を続ける(続けなければならない)ことが明らかだ。今後の展望は以下の通りだ。・ 顧客データプラットフォーム(CDP)が新しいCRMになる 収集されるデータ、特にファーストパーティデータが増加しており、企業はそれらを管理する必要がある。CDPはマーケティングテクノロジースタックにおける「あれば良い」追加要素ではなく、必須要件となる。
・ セキュリティがこれまで以上に重要になる 消費者の約4分の1が、1年前と比べて個人情報をパーソナライゼーションに使うことに抵抗感があると述べている。企業は、消費者がより良いパーソナライゼーションを可能にするために必要なインサイトを提供し続けることができるように、個人データの安全を守る信頼に値することを顧客に証明する必要がある。
・私たちもAIと同じように学び進化する 現在でも、AIとパーソナライゼーションとの関連性において成功をどのように測るかを決めている最中だ。例えば、企業の47%は正確なデータが成功の証だと述べており、42%は時間の節約が成功を示しているとしている。顧客の定着率を成功の指標に挙げたのはわずか44%である。AIとパーソナライゼーションから何を得ようとしているのかわからなければ、当然、成功も失敗も経験することになる。確実なことは、AIは驚異的な速さで普及し続け、賢明な企業やマーケティングリーダーは、測定可能なアドバンテージを得るために投資を行うということだ。
パーソナライゼーションに関連する良いニュースは、ツールの進化が速いことだ。技術はほぼ出揃っていて、今後も性能が上がっていくだろう。そして、顧客の需要も確かに存在する。最終的には、AIに慣れていく(そうならなければならない)ことで、私達もその「確かにある需要」に辿り着くことができるのだ。
(forbes.com 原文)