政治

2023.04.30 15:00

暗殺未遂を乗り越えた政治犯に懲役25年 ロシアで声を上げることの代償とは

カラムルザは「言論の自由を行使」したことを謝罪しなかったが、唯一後悔していることがあると語った。「何よりも、私の長年にわたる政治活動で、現在の大統領府(クレムリン)体制がロシアと世界に危険をもたらしていることについて、同胞や民主主義諸国の政治家を十分に説得することができなかったことだ。これは今日、誰の目にも明らかなことだが、とてつもない代償を払うことになってしまった」

それでもカラムルザは、ロシアの未来に希望を託していた。「けれども私は、この国の闇が晴れる日が来ることも知っている。それは、黒は黒と呼ばれ、白は白と呼ばれるようになる時、2×2は4であると公式に認められる時、戦争は戦争と呼ばれ、強奪者は強奪者と呼ばれるようになる時、そして戦争を止めようとした者ではなく、戦争をあおり、開始した者こそが犯罪者として認識されるようになる時だ」

カラムルザの裁判は、公正な裁判を受ける権利や適正な手続きに関する国際的な法的基準が守られていないとして、世界中から批判を浴びている。世界中の政府や人権団体が、カラムルザの釈放を求めている。

米国務省は昨年1月、カラムルザをはじめとする政治犯の釈放を世界的に求める運動「正当な理由もなく」を開始。カナダは同年11月、カラムルザを含む野党指導者に対する組織的な人権侵害に関与したとして、エレナ・レンスカヤ、アンドレイ・ザダチン、ダニラ・ミヘエフを制裁対象に加えた(訳注:レンスカヤはモスクワ・バスマンヌイ地区裁判所の裁判官、ザダチンは連邦捜査委員会の特別捜査官、ミヘエフはカラムルザの裁判で検察側の証人を務めている)。米財務省外国資産管理室(OFAC)も今年3月3日、この3人を制裁対象に加えた。

ブライアン・E・ネルソン財務次官(テロ・金融情報担当)は、カラムルザの「恣意的な拘束は、クレムリンがロシアの法制度を操作して反対意見を封じ込めている一例だ」と指摘。「カラムルザやアレクセイ・ナワリヌイをはじめ、ロシアで不当に投獄されている多くの人々は忘れられておらず、私たちは国際舞台でこうした虐待の加害者の責任を引き続き追及していく」と宣言した。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が犯した残虐行為を白日の下にさらすカラムルザをはじめとする人々のために、国際社会は一致団結して声を上げなければならない。カラムルザの投獄は、プーチン政権がロシアやウクライナなどで犯している犯罪を象徴するものだ。沈黙は、加害者が罪を犯し続けることを許すだけだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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