欧州

2023.04.25

ロシア、とうとう詰んだか ベラルーシ国防省が発表した訓練の中身とは

短距離弾道ミサイル「イスカンデル」(Photo by Konstantin Zavrazhin/Getty Images)

タス通信によれば、ベラルーシ国防省が22日、核兵器搭載が可能な短距離弾道ミサイル「イスカンデル」を巡り、ベラルーシ軍兵士のロシア内での訓練が終了したと発表した。「ロシアのミサイル試験場で、完全な訓練を実施した」としている。イスカンデルを発射する操作方法や戦術核弾頭の扱い方も学んだ可能性があるという。すでに、ベラルーシ国防省は2月、イスカンデルのベラルーシへの配備を完了したと発表した。ロシアのプーチン大統領も3月、ベラルーシと戦術核の配備で合意したと明らかにしていた。

本当に、ベラルーシ軍兵士に核弾頭の扱い方を教えたというのだろうか。本当にそうなら、ロシアは約80年間、自らも散々享受してきた戦後秩序を自ら破壊したことになる。もちろん、ロシアは平和を守る番人役でなければならない国連安全保障理事会常任理事国の座にありながら、ウクライナに攻め込んだ時点で、戦後秩序をぶちこわしている。それでも、戦後秩序の最大の象徴である核兵器を同盟国とはいえ、他国に触らせる事態に至ったとすれば、「ロシア終わった」と言わざるを得ない。

もともと、ベラルーシはウクライナ、カザフスタンとともに、1994年のブダペスト覚書により、米英ロの核保有国3カ国から安全を保障される代わりに、領内に残っていた旧ソ連製核兵器の撤去に応じた。ソ連・ロシアはその後、他の国に核兵器を供与したり、情報を共有したりすることはなかった。ソ連は1960年代、北朝鮮にIRT2000実験用原子炉を提供するなど、原子力協力を行った過去はある。ただ、ソ連・ロシアが北朝鮮に核兵器を供与する方針だったわけではなく、1990年代に第1次朝鮮半島核危機が起きて以降、ロシアは6者協議などの場で、北朝鮮の核廃棄を求め続けてきた。

そもそもロシア自身、ウクライナ侵攻直前の2022年1月、核保有5カ国の一員として「核戦争に勝者はおらず,決して戦ってはならないことを確認する」などとした共同声明文を発表した。核兵器禁止条約を求める勢力を牽制する狙いがあり、イスラエルや北朝鮮などの非公然核保有国はともかく、5カ国で核保有を独占することを正当化する狙いもあった。ロシアは当時、「俺たちが共同声明を主導した」と主張していた。
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文=牧野愛博

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