欧州

2023.04.25

ロシア、とうとう詰んだか ベラルーシ国防省が発表した訓練の中身とは

短距離弾道ミサイル「イスカンデル」(Photo by Konstantin Zavrazhin/Getty Images)

これは米国も同じことが言える。米軍は1991年まで、韓国に戦術核兵器を配備していた。韓国では今、北朝鮮の核開発に対抗して「再び、韓国に戦術核を再配備せよ」という意見が噴出している。ただ、当時、韓国軍がどのくらいまで米軍の核兵器に触らせてもらったかといえば、ほとんどゼロに等しい状態だった。米韓連合軍は当時、定期的に戦術核の発射訓練を行った。当時、この訓練に参加した韓国軍元将校によれば、韓国軍の役割は、発射訓練場の準備や警備だけだった。元将校は「遠くの方で、米軍が訓練するのを眺めているだけだった。扱っていた兵器が戦術核なのか、模擬弾なのかすら、教えてもらえなかった」と証言する。

ロシアがベラルーシに戦術核を配備したとしても、おそらく核兵器にPAL(Permissive Action Link=行動許可伝達システム。暗号なしでは核弾頭の安全装置を解除できない安全装置)を導入しているだろう。ベラルーシ軍兵士が勝手に核兵器を扱うことは不可能のはずだ。ロシア軍が、どのような事態に至れば、欧米諸国のどの場所をどの核兵器を使って攻撃するのか、という情報も決してベラルーシに与えないだろう。ベラルーシのルカシェンコ大統領は「欧州最後の独裁者」として知られた人物だ。2020年8月選挙で大統領に再選されると、国内で大規模な反政府デモが起きた。そんな危なっかしい国に、核の情報を共有しようとは思わないだろう。

逆にいえば、そんな国と一緒になって、「ベラルーシに戦術核を配備した」「ベラルーシ軍兵士が戦術核の扱い方を訓練した」と宣伝するのは、それだけ、ロシアは追い詰められている証左なのかもしれない。もちろん、こうした宣伝は、北大西洋条約機構(NATO)諸国を始めとして国際社会がウクライナを支援しないようにする、「認知領域の戦い」の一環でもあるが、戦い方の質が落ちていると言えるだろう。

英国防省は22日、ロシアの対独戦勝記念日(5月9日)の際、恒例の市民らによるパレードが中止になった問題で、ウクライナでの戦死者の規模が大きくなっていることが原因と分析した。米国から流出した機密文書によれば、ウクライナも対空ミサイルなどの保有数に不安が生じている模様だが、ロシアも相当追い詰められている状態にあることは間違いないようだ。

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文=牧野愛博

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