ウクライナの天然ガス埋蔵量と貯蔵量が欧州の助けに
欧州はロシア産天然ガスへの依存度を減らしつつある。1年前には輸入の約4割を占めていたが、現在は1~2割程度にまで縮小しているのだ。一方、米国産天然ガスが欧州の輸入に占める割合はこれまで約3.5%にとどまっていたが、現在は約4割に達している。これは、シェニエールエナジー、シェル、トタルエナジーズが輸出した560億立方メートルの液化天然ガス(LNG)だ。欧州はこれを受け入れるため、23基のLNGターミナルを建設した。ウクライナは2014年、ロシアの操り人形だった自国のビクトル・ヤヌコビッチ大統領を追放したことで、ロシアによるクリミア侵攻と併合を招いた。これを受け、西欧はロシアに対する経済的な報復を約束したが、実行には移さなかった。このような横暴の際にも、安価な天然資源が切り札となるというのが世の常なのだ。
こうした背景から、昨年2月のウクライナへの侵攻開始時点では、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は西側に持続力があるとは考えていなかった。だが、同大統領の見込みは甘かった。プーチン大統領はウクライナに対する権力だけでなく、同国の天然ガスパイプラインの支配権も欲していたが、結果的にロシアは戦場でもエネルギー市場でも損害を被ることとなった。欧州は、ロシアにとって有利な条件で取引できていた天然ガス市場を放棄しただけでなく、欧州への天然ガス供給を倍増させるはずだった550億立方メートルの輸送能力を持つパイプライン「ノルドストリーム2」も破棄したのだ。
ウクライナの歴史の転換点
米国企業は水平掘削や水圧破砕法、3次元反射地震探査法など、欧州第3位の天然ガス埋蔵量を誇るウクライナで天然ガスを生産し、同国の潜在能力を確実に引き出す技術的な専門知識を有している。当然のことながら、企業は紛争の動向を懸念しており「戦争リスクの特別な仕組み」の導入について米政府と協議する必要がある。チェルヌイショウCEOは次のように語る。「これはウクライナの歴史における偉大な瞬間だ。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、私たちの国を守るための戦いを指揮してきた。感情が高ぶっている。私たちは独立した豊かなウクライナを発展させることに意欲的であり、米国からの支援に感謝している。ロシアと戦い、EUに受け入れられるために、石油やガスといったエネルギーを生産することに、これまで以上に意欲を燃やしている。私たちは勝利したいのだ」
ウクライナがエネルギーを自給自足できれば、安心につながるだろう。さらに外国からの投資があれば、ウクライナは天然資源の純輸出国になり、同国産天然ガスは敵対するロシアを弱体化させる武器として、ロシア産天然ガスに取って代わることさえできるようになるだろう。
(forbes.com 原文)