これらは人によって千差万別で、休みの取りやすさや昇進のしやすさ、女性の働きやすさ、給与がコミッション制であるかどうかなど、違う項目を入れることももちろん可能だ。
計算の結果、190点満点中でA社とB社が118点台と僅差、C社が121点と頭ひとつ抜けた形となった。
自分の感覚と合計点が近くなるまでウェイトを調整、その上で、気持ちで決断する
A社<B社<C社に違和感を感じたYさん。筆者は彼に、それは彼自身が持っている、3社に対する本当の気持ちというか感覚と、作った表が乖離していることを意味する、と説明した。するとYさんは、違和感を感じたその時点ですでに、「実はB社が一番高い点数であって欲しかった」という自分の気持ち=本音が見えたという。この数字がそこまでしっくりきていない様子のYさんに筆者は、その原因の一つが、各項目を等分の10点満点で採点して、その結果を単純に合計したために、Yさんが重視したい項目も、そこまで重要と思っていない項目も等しいウェイトで合計が算出されてしまったことにあると想定。自分で抽出した項目といえど、各項目が等しく重要なわけではないので、傾斜配点をつけることを提案した。
Yさんは、お金、企業の将来性、仕事自体といった項目を10点満点のまま残し、チームメンバー、環境、試用期間の長さなどはそれより低い満点に再設定した。傾斜のウェイトを設定した後で点数を計算し直し、全項目の点数を企業ごとに再度合算した。全体を100点満点で設定するときれいだが、Yさんの場合は譲れないウェイトなどがあったので、105点満点になった。
さらに、筆者はYさんに、違和感を感じる項目やウェイトがあったら、傾斜配点の掛け方を納得がいくまで変えてみることを提案。例えば、「お金」が自分にとって大変重要だという考えから、全体の25%以上を占めるウェイトを当てていたとする。そうすると当たり前のことだが、お給料が一番高いオファーの合計点が勢い高くなる。もちろんお給料も大切であることを筆者も否定しないが、お給料だけで仕事を選びたいわけではないのが実際のところ。
Yさんは、「お金」に当てていたウェイトのパーセンテージを少し下げて、他の項目がトータルのスコアに与える影響を少し増やし、各項目の評価の数字自体を見直した。この行ったり来たりを通して、「給料がちょっと少なくても仕事の内容と上司を重視したいのだな」「どうしても仕事の内容は譲れないのだな」などYさんが持っている仕事観が見えてきた。
このように、いったん作った表をあちこちいじって、各オファーの要素とYさん自身の感覚とがより近くなるように調整。出てきた表は、少なくとも彼にとっての各オファーの「客観的な比較と数値化」がされたものとなった。
A社の点数が一番低いのは変わらずで105点満点中64.35点、B社とC社は僅差でそれぞれ67.75点、C社が68.85点となった。この、B社とC社が競っている状態の数字が、Yさん曰く、本人の気持ちにより近いものだと腹落ちしたという。