人的資本元年!「失敗だって資産」と言える会社は最高

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アイデアの起点は「投資思考」

住友林業木材建材事業本部 業務企画部 安田侑加

住友林業木材建材事業本部 業務企画部 安田侑加


安田曰く、このアイデアの着想には、1年間参加した104コンソーシアムでの学びが大きかったという。

「有形のものだけでなく、経験や失敗のような無形のものも、資本として投じられると知りました。なるほど、いわゆる財務諸表に載らないものも、とらえ方によっては投資に使えるんだと、思考がひらけました」

「失敗だって、資産だから」という安田のコピーは、まさにこの発想に由来する。104コンソーシアムでは、こうした発想を「投資思考」と呼び、学び合う場だ。そこでは、20代同士で何度もグループワーク、プレゼンテーションをする機会があり、受けたフィードバックも安田のアイデアを方向付けた。

「国際社会経済研究所の藤沢久美さんからは、参加者のアイデアに『手触り感のあるものが欲しい』というフィードバックを何度もいただいたこと、私も解像度を上げて、具体的に提案したいという気持ちになった。だから、日頃の業務で感じる、自分の会社が抱える課題に、投資思考で向き合うアイデアでの提案にしました」

そうして、所属する住友林業の新規事業において、構想段階も含めた失敗体験を「投資」して、新規事業の停滞を「課題解決」し、失敗を恐れない社内風土の醸成を「リターン」として得るという事業アイデア提案へとなった。

Forbes JAPAN賞の受賞理由は「今こそ、必要だから」

なぜ安田の社内SNSのアイデアをForbes賞に選んだか。理由は、今、まさに取り組むべき課題を解決しうるアイデアであったからだ。どんなに素晴らしい事業アイデアでも、タイミングを逃しては価値が半減する。「失敗を恐れない組織風土への改革」という人的資本経営ど真ん中の課題に挑戦するアイデアであると思い、Forbes賞に選んだ。

冒頭でも記した通り、人的資本開示の義務化に伴い、人的資本経営の波が日本にきている。人事を担当する経営者CHRO(Chief Human Resource Officer)を設置する企業も急増。「人」は経営陣が真剣に取り組まなければならない経営課題だという認識が広がっている。

国内でも優秀なCHROは取り合いだ。なぜか。それだけ人的資本経営は難しいからだ。人的資本には、財務的資本とは違った特性がある。人的資本を投入した結果、アウトプットが現れるのは組織風土という目には見えないものだからだ。

安田の提案する社内SNSが機能すれば、暗黙知を形式知化し、社内アントレプレナーが繋がる。それは、優秀な社内人材の心理的安全性を担保し、挑戦を連鎖させる組織風土の醸成につながるだろう。また、失敗を資産とらえる社内SNSを導入すること自体が「失敗は、価値ある学びだ」という経営から組織へのメッセージともなるはずだ。

ちなみに、安田のプレゼンは「社内での問題提起」でもあったという。

「今回の104コンソーシアムでのプレゼンテーションは、自社向けのサービスに限定したお題ではなかったのですが、あえて住友林業を主語にしました。社内で問題提起しないと、たとえ社外のツールを導入したとしても、解決しないと思っていたので」

この社内SNSのアイデア自体が、新しく生まれた社内アントレプレナーによる失敗を恐れない行動であった。

文=Forbes JAPAN編集部

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