だが、あなたの考えが常に「何がいけなかったのか」に対する答えを出すことに固執し、起こったことを何度も何度も頭のなかで繰り返し、分析し、その瞬間にあなたが取り得たより良い選択肢を考え出そうとしていることに、気づいたことがあるだろうか?
「内なる批評家」が頭のなかの中心的を占め、ほんの一瞬の出来事が、その1日全体を悪かったことにしてしまう──このような時、私たちのなかでは何が起きているのだろう?
神経科学者たちはこうした現象について、私たちの脳が生まれつき持つ「ネガティビティ・バイアス」によるものだと説明する。不快な瞬間の経験は、接着剤で貼り付けたように私たちから離れない。その一方で、良くも悪くもないことや、良かったと思える経験は、テフロン加工されたものの表面で跳ね飛ばされるように、ほとんど気づかないうちに消えていく。
ただ、脳がネガティビティ・バイアスを持つようになった理由を「生存可能性」の観点から考えてみれば、そうした不快な瞬間こそが、私たちが記憶しておきたかったものだったのだということがわかる。
例えば、きれいな赤い実を摘んで食べた祖先が具合を悪くしていたとすれば、私たちの脳はそのことを深く記憶にとどめ、その後はその実を食べないようにしてきたはずだ。ネガティビティ・バイアスは、私たちの生き残りのために存在してきたのだ。
だが、現代ではそうしたバイアスは、ちょっとした不愉快な会話を1日中頭から離れない問題にしてしまったり、夜も眠れなくなるような記憶にしてしまったりする。
そして、私たちはそうした不快な記憶が頭から離れないことによって、楽しい瞬間、幸せな瞬間をみすみす逃したり、後になって賢明ではなかったと悔いるような選択をしてしまったりする。
こうしたことに対して、何か私たちにできることはないのだろうか──?
幸い、その方法は「ある」ネガティビティ・バイアスに対応するためにまず行いたいのは「マインドフルリーダーシップ」のトレーニングで行われる次の簡単な2つの練習だ。