1)この「サステナブル・プライム(仮名)」の導入を発表するプレスリリースは、アマゾンの内外の人々の記憶に残るものとなる。
2)アマゾンは、荷物の配送数を前年と同様に保ちつつ、総売上高の伸びを確保できるよう、サステナブル・プライムの料金を調整できる。
3)サステナブル・プライムが、内的な強制メカニズムとして働くことで、アマゾンは、荷物を集約して箱の使用量を減らす方法を編み出すことができる。「必要は発明の母」なのだ。
追加料金の額は例えば、プライム会員向けの食料品宅配サービス「Amazonフレッシュ」で、注文金額が一定額(米国では150ドル)を下回る場合に取られる配送料と同程度に設定したらどうだろうか。
この皮肉がおわかりだろうか? こう考えれば、追加料金を支払うことの抵抗も減るはずだ。
米国では、Eコマースへの固執がもたらす悪影響は拡大する一方だ。
世界経済フォーラムが2020年に発表した推定によると、都市部のラストマイル配送(物流のうち最後の経路に当たる消費者への配送)による炭素排出量は、世界上位100都市で2030年までに30%以上増加する見通しだ。ラストマイル配送による年間CO2排出量は、2030年までに2500万トンに達するとみられている。
危機的な予兆がこれほど現れているにもかかわらず、米国人は2022年7月にプライムの年会費が119ドルから139ドルに値上げされたとき、大きなショックを受けなかった。なぜなら、2日以内に商品を配達してもらったり、音楽や動画コンテンツを24時間いつでも好きなときに楽しんだりする必要があるからだ。
もし今の問題が「地球を救うか、それとも映画を見るか」であるなら、アマゾンはなぜ、こうした取り組みを本気で考えないのだろうか。
米国のプライム会員は1億人を優に超えており、その多くは、何のためらいもなく会費を毎年払って「無制限の無料配達」を享受している。アマゾンには強力な仕組みと創造力があり、それがアマゾンへの「中毒」を自らつくり出してきた。だがそのパワーは、中毒を抑制するためにも使えるはずだ。サステナブル・プライムであれ、何かまったく別のものであれ、世界と力を合わせて何かを考案できるはずだ。
筆者自身もアマゾンのユーザーだが、長期的に考えたとき、サステナブル・プライム以上に価値のあるプライム機能は、他に思いつかない。アマゾンは、今現在のかたちを超えることができるし、超えるべきなのだ。
(forbes.com 原文)