食&酒

2023.04.09

廃棄物を利用した日本酒づくりが産んだ「地エネの酒」とは

「地エネの酒 環(めぐる)」。右から神戸酒心館「福寿」(純米吟醸酒)、富久錦「富久錦」(生酛純米酒)、山陽盃酒造「播州一献」(純米吟醸酒)、岡田本家「盛典」(生酛純米酒)

そして最後に「地エネの酒 環」を醸す蔵元をめぐり、夕食では4銘柄の試飲会も行われた。とにかく「飲んで地域の資源が環(めぐ)りだすとはどういうことか?」について、見て、味わって体感した充実の旅体験だった。インバウンド向けには説明の仕方などさらなる工夫が必要だとは思うが、こういったニッチな旅こそ、これからの国内外の個人旅行者にもピッタリの内容だと思われた。

ツアー参加からほどなくして、辻本さんから、大阪の大手百貨店で、初の「環」の販売イベントを開催したとの連絡があった。地エネの酒や資源循環のカキ、野菜や弓削牧場の製品も揃え、辻本さんも販売員として現場に立ち、お客様の良い反応を直に感じたとのことだ。結果、1週間で200万円としていた売り上げ目標を軽くクリアできただけでなく、SDGsをテーマとしたこれまでの百貨店の催事のなかで、いちばん盛り上がったと言われたそうだ。

大阪の阪急うめだ本店の催事での販売

大阪の阪急うめだ本店の催事での販売


「もったいない」という気持ちから、持続可能な地域のデザインを描くローカルSDGsは、もはやお題目だけではなく、着実に取り組む人々の努力のおかげで、それを支える消費者の行動にもしっかり結びつきはじめているということだろう。

観光もしかり。本物の、安心安全、地球規模の視点でのウェルビーイングの実現としての観光体験が確実に求められるようになっている。真の観光体験では、本当の美味しさや本物の感動、そして経済循環をうむ。それこそが、これからの観光の本来のあるべき姿であるのは間違いない。

最後に、日本酒を飲んでいる時に、本当に美味しそうな表情をしながら語る、辻本さんの言葉を紹介しよう。

「大地の自然の微生物の働きで、美味しい自然のめぐみが得られるのは当然のこと。その当然が、現在、失われつつあることをもっと人は知るべきなのです。取り戻すべきものは何なのか? もう一度、じっくり考えてみませんか? まずは一献」

「地エネの酒 環(めぐる)」の4銘柄を語る辻本一好さん

「地エネの酒 環(めぐる)」の4銘柄を語る辻本一好さん

文=古田 菜穂子

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