将来は植物性代替肉となり得る?
ジャックフルーツの味覚に関しても、まだ検討すべき課題があると海野は言う。「ジャックフルーツは、その歯応えとジューシーさの特徴をうまく活かせば、将来は植物性代替肉となり得ると考えています」
確かに前出の試食会に参加して、ジャックフルーツとお米など、さまざまな食材と組み合わせた料理をいただいたが、この果物には料理する人間の創意工夫で多様なポテンシャルがあると感じた。ビーガンやベジタリアンなどの要素が強い有名料理店と連携していけば、さらに選択肢は増えていくことだろう。
ジャックフルーツの味覚の改良に関しては、「昔のカップラーメンも改良を繰り返して現在の味になったように、段階的に良くしていく」ことを海野は狙っているという。かつて「カニかま」がカニの代わりとして受け入れられてきたように、新たな選択肢としてジャックフルーツのポジショニングを模索していくという。
「野菜なんだけれども、まるでお肉みたいに食べられる野菜というポジションでつくっていけたらいいなと思っています」(海野)
近年、飢餓に苛まれる人たちがいる一方で、先進諸国では食品廃棄の問題も深刻で、世界中で約13億トンの食品が廃棄されている。このような状況に加えて、農産物の種子を絶やさないための食の多様性も重要だと海野は考えている。
「日本ではまだ認知度が低いジャックフルーツが食卓に並ぶことで、食の選択肢が増える。そしてジャックフルーツのみならず、まだまだ世界には廃棄されている食物があり、それらが有効活用されることこそが、食糧危機への一助になると信じています」
2021年の国際連合食糧農業機関(FAO)の報告によれば、世界中で異常気象による洪水や干ばつが発生し、これによって農作物の生産が減少した。さらに気候変動、人口増加と都市化による農地の減少、貧困層の増加による栄養不足により、食糧問題はますます深刻さを増してくる。
ジャックフルーツが食糧問題の全てを解決するわけではないが、その1つの手段になる可能性は非常に高い。そして人類全体がこの未曾有の危機に取り組んでいくことが重要だ。この記事をきっかけに1人でも多く食糧問題について関心を持ってもらえれば幸いだ。