法螺貝の役割を生かした生き方「ホラ・ドリブン」

2. 獣や魔物をよける役割

また、山に入る際の法螺貝の音は「獣や魔物を遠ざける役割がある」と信じられてきました。響きわたる音が、山にひそむ恐ろしいものや、悪いものたちを遠ざけるからだといいます。同様に、「いいホラ」は、悪巧みする人を遠ざける魔よけになるでしょう。人をワクワクさせるようなストーリーは、人のなかにあるいい志をひきつける一方で、悪しき気持ちを遠ざけるのです。うまいことだましてやろうとか、ひともうけてしてやろう、そんな気持ちをくじけさせるために、いいホラは役立つはずです。
よき教えを遠くまで届かせる法螺 貝のように、大人から子どもまで、 いいホラは世代を超えて広がって いく。

よき教えを遠くまで届かせる法螺 貝のように、大人から子どもまで、 いいホラは世代を超えて広がって いく。

3. 志を遠くまで広げる役割

さらに、「法螺貝」自体の語源もさかのぼってみます。法螺の法は「仏様のよい教え」で、螺は「螺貝が鳴り響くこと」。仏教のよい教えははるか遠くまで伝わる、ということを意味しています。同様に、いいホラは、そこにこめられた「誰かを喜ばせたい」「共に幸せになりたい」という気持ちが人から人へと波及し広がっていきます。いま風にいうならば、強力なPR効果が狙えるわけです。
法螺貝は海の波とも共鳴する。ウ ソとは違う「いいホラ」は人の心 や時代の波と共鳴しあえるはず。

法螺貝は海の波とも共鳴する。ウ ソとは違う「いいホラ」は人の心 や時代の波と共鳴しあえるはず。


さあ、いいホラを生かした、いわば「ホラ・ドリブン」な生き方で人生を楽しんでいきましょう。ただし、気をつけておきたいことが2つ。ひとつは「ホラはいいけど、ウソはだめ」。基準は「人を喜ばせたい」という気持ちから生まれたものかどうか。人をだましたり、傷つけたりする「ウソ」になっていないか。ホラは「GIVE」の精神から、ウソは「TAKE」の気持ちに根ざしている、とも言えるでしょう。

ふたつ目は「法螺貝を吹くようにホラを吹く」こと。まわりの人との距離感を測り、場の空気をつかみ、悪い気持ちを遠ざける。そうすれば、みんなのよき心からよき心へと、ひとりでに、はるかかなたまで広がっていきます。

これらを意識しながら、どんどんホラを活用しましょう。ホラ・ドリブンな生き方は、まわりだけでなく、自分自身をワクワクさせてくれるはずです。

本連載で発表しているすべてのコンセプトは、実際にビジネスに取り入れられるよう、講演や研修、ワークショップとしても提供しています。ご興味ある企業の方は、Forbes JAPAN編集部までお問い合わせください。

中村直史◎五島列島なかむらただし社 クリエーティブディレクター/コピーライター/ホラ吹き。五島列島福江島を拠点に日本各地で人を幸せにするすてきなホラ吹きにトライし続けている。

電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

文=中村直史 イラストレーション=尾黒ケンジ

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