CIAの妨害工作テクニックで使われている?組織をダメにする会議方法

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現在の米国中央情報局(CIA)の前身にあたる組織「米国戦略情報局(OSS)」は1944年「Simple Sabotage Field Manual(妨害工作のための簡易な野戦教本、以下サボタージュ・マニュアル)」という興味深い名前の文書を作成した。

これは、敵国で米国の利益のためにサボタージュ(妨害工作)を実行する、その国の工作員(米国への協力者)に向けたガイドとして作られたマニュアルだ。工作員に対して妨害工作の手段を教え、連合国が第二次世界大戦で勝利するための後押しとする狙いがあった。

このマニュアルには、電力や鉄道、通信手段を含む、幅広い妨害工作が記されている。だが、現代のオフィスワーカーである我々にとって最も参考になると思われるのは「組織と生産への一般的な妨害」を扱ったセクションだ。ここで取り上げられている多数のテクニックの中から、特に筆者の目にとまった「ミーティングの進行を妨害する手法」をいくつかご紹介しよう。

・前回のミーティングで決まった事柄を蒸し返し、決定事項の妥当性に関する質問を再び投げかけるよう試みる
・すべてを『正規ルート』を通じて行うよう、強く主張する。決断を迅速に行うための近道を決して許さない
・できる限り頻繁に、本筋に関係ない話題を持ち出す
・情報伝達や議事録、決議の細かい言い回しについて、延々と議論する

念のため言っておくと、これはCIAの前身にあたる組織が、第二次世界大戦中に米国の敵国で妨害工作を行う外国人工作員のために作成したマニュアルだ。だが、現代の企業で行われているミーティングに、ある程度の回数参加したことがある人なら、意識的かどうかはともかくとして、これらのテクニックが日常的に行われていることはおわかりだろう。

例えば、筆者が創業したコンサルティング企業Leadership IQ(リーダーシップIQ)のアンケート調査「How Effective Is Your Executive Leadership Team?(あなたの会社の経営チームの効率性は?)」の結果を見てみよう。

意思決定を行う際に、背信行為や受動的攻撃行動(サボりや黙り込むなどの受動的な態度で攻撃的な感情を表現する行動)などがなく、経営陣の全員が、誠心誠意その決断に関わっているか? という問いに「強くそう思う」と回答した企業トップは、全体のわずか19%だった。また「自身の発した言葉が実際の行動につながる」と確信を持って断言できると回答した企業トップも、14%にすぎなかった。

企業の経営チーム、あるいはどんなチームでも、同じ案件が何度も蒸し返され、その問題にけりをつけて前に進むことができなくなるというのは、見慣れた光景だろう。まさに、前述したサボタージュマニュアルにある「前回のミーティングで決まった事柄を蒸し返し、決定事項の妥当性に関する質問を再び投げかけるよう試みる」というテクニックを、積極的に実行しているように見えるほどだ。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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