ロシアがウクライナへの侵攻を続けているにもかかわらず、バッハ会長は記者会見で、来年開催されるパリ五輪にロシアとベラルーシの選手が参加しても「問題ない」との見解を示した。
同会長は、両国の選手の参加は「多くのスポーツで毎日のように」認められていることだと指摘。「ごく少数の例外を除いて」欧米諸国を含む複数の国が、自国で行われる大会にロシアとベラルーシの選手の参加を許可する「査証(ビザ)を発給している」と説明した。こうした事例は特にテニスで顕著だが、自転車競技や卓球、アイスホッケー、ハンドボールなどでもみられるという。
例えばテニスでは、全英ウィンブルドン選手権がロシアとベラルーシの選手に対して出場禁止措置をとっているが、四大大会(グランドスラム)の他の3大会は参加を認めている。選手個人には「自国政府の行動や決定に対する責任」を問わないというのが、全米オープンの説明だ。
侵攻開始当初、IOCはスポーツの国際大会の主催者に対し、ロシアとベラルーシの選手を除外するよう求めていた。ところが今年1月、両国の選手が中立の旗の下、国家から独立した選手として五輪に参加することを容認する決定を下した。
これに対し、300人以上のフェンシング選手がIOCと国際フェンシング連盟に、両国の選手の出場を認めるのは「破滅的な誤り」だとして、参加禁止を継続するよう求める書簡を出した。その中で、IOCの決定は「スポーツと国際平和の価値とルールを、ある国が結果を恐れることなく侵害できる」という前例を作るものだと非難した。
バッハ会長の発言とは裏腹に、IOCは28日付の報道発表で「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する」と改めて表明した。ウクライナ侵攻は、競技開催中と終了後の1週間はすべての戦争を禁止するという国連総会で採択された「五輪休戦」決議に違反するものだと指摘している。
五輪開催国フランスを含む34カ国の代表は先月、ロシアやベラルーシの選手がパリ五輪に参加することに「同意しない」とする共同声明を出した。この中にはラトビア、リトアニア、ポーランド、デンマークなど、両国の選手の出場が認められれば大会をボイコットすると表明している国も含まれる。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先に、五輪にはロシア人選手の「居場所があってはならない」として、出場を禁止するよう求めていた。
ロシア五輪委員会(ROC)は、2014年に自国で開催されたソチ五輪で国家ぐるみのドーピング違反の証拠が見つかるなど、近年、複数の制裁に直面している。それ以降、ロシア人選手は国旗を掲げて競技することを禁じられ、2016年以降のすべての国際大会で五輪旗の下、国名の代わりにROCという呼称で出場している。
(forbes.com 原文)