五輪の開催国は、ホームアドバンテージによって選手のパフォーマンスを向上させ、より多くのメダルを獲得できると言われている。以前の研究では、夏季五輪の開催国は獲得メダル数を1.8%増やせるとされていた。
しかし、ハンガリーの研究者のGergely CsurillaとImre Fertőが1996年から2021年の夏季五輪の開催国(米国、オーストラリア、ギリシャ、英国、中国、ブラジル、日本)の獲得メダル数を調査したところ、開催国がメダルを増やす背景には、他の要因が作用している可能性が浮上した。
五輪の成績を決定づけるアスリートの生活水準や優秀な選手の数は、その国のGDPや人口規模などの社会経済的な要素に左右される。研究者は、これらの要素を考慮に入れた場合、「開催国効果」と呼ばれるものが事実上、相殺されると述べている。
これまでのデータを調査した結果、オーストラリア(2000年)と英国(2012年)だけが、開催国となった年にメダルの数を大幅に増やしていたという。
研究チームは、五輪の開催国を目指す国に「獲得メダル数に関して、過度な期待を控えるべきだ」と提案している。また、今回の研究結果を確認するために、さらなる調査が必要だと述べている。
経済効果にも疑問
オリンピックの経済効果については、専門家の間で意見が分かれている。米国の外交問題評議会(CFR)の報告書によると、五輪の開催都市は国際オリンピック委員会(IOC)への招致準備に数百万ドルを費やし招致プロセスだけで5000万ドルから1億ドルが必要になる。また、開催が決定した場合、インフラの構築やスタジアムの整備に50億ドルから500億ドル以上の費用がかかると言われている。CFRによると、これまでで最も高額な五輪は2016年のロシアのソチ冬季五輪で、600億ドル(約7.7兆円)近くがかかったとされる。
CFRによると、五輪は地域の観光や消費を後押しするものの、その収益は開催に関わる費用のほんの一部しかカバーできない場合が多く、「長期的にはプラスの経済効果をもたらす証拠はほとんどない」という。
2024年にパリで開催予定の夏季五輪の納税者の負担は、33億ドルに上る可能性があると試算されている。
(forbes.com 原文)