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2023.03.26

従業員調査の悪い結果に管理職が感謝すべき理由

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筆者が創業したコンサルティング企業リーダーシップIQ(Leadership IQ)が最近行ったアンケート調査では、78%の米企業が従業員エンゲージメント調査から大きな成果を引き出せていないことが明らかになった。

理想としては、調査で高いスコアが示された場合にはそれを維持し、スコアが低かった場合には大幅に改善すべきだ。だが、特に悪い結果が出たとき、調査で示されたデータを無視したり、否定したり、軽視したりする組織があまりに多い。

皮肉にも、従業員調査で悪い結果が出ることは、管理職や役員にとって大きな機会となり得る。その理由の1つ目としては、従業員の怒りに対処するのは、無関心に対処するよりはるかに楽であることがある。調査での低いスコアは、従業員が会社のことを気にかけており、変化を起こしたいと上層部に伝えていることと同じだ。

従業員調査への参加率が60%未満の場合、多くの人が職場環境を改善する意思すらないことを意味し、そうした状況を変えることは非常に難しい。しかし、従業員が自主的に調査に回答しているなら、たとえ評価が低かったとしても、改善する意思がまだあるということだ。

2つ目に、調査結果のスコアが低いということは、リーダーがフィードバックに適切に対処してくれるとの信頼が従業員にあることを意味する。従業員が少しもリーダーを信用していなかったり、上司の報復を恐れていたりしたら、調査に回答することはないだろう。

ネガティブなフィードバックにも耳を傾け受け入れるリーダーは、信頼でき、話しやすく、適切に反応をしてくれる人として認識される。これにより信頼が深まり、最終的に従業員エンゲージメントが改善する。

管理職は「グロース(成長)マインドセット」を持って調査結果と向き合い、低いスコアに対して言い訳をするのではなく、学びや改善の機会として捉えることが必要だ。グロースマインドセットとは簡単に説明すると、人の能力や知性は努力や学習により向上できるという考え方だ。

この反対は「フィックスト(固定)マインドセット」と呼ばれ、能力や知性は元から決まっていて変えられないとの考え方を指す。グロースマインドセットを持つ人は、課題を受け入れ、失敗を学びや成長の機会として捉えるが、フィックストマインドセットの人は挑戦を避けがちで、失敗に意気消沈する。

グロースマインドセットを持つリーダーは、部下が勤務環境のさまざまな側面に不満を持っていることを知っても、自己弁護に走ったり調査結果を否定したりせず、学びと改善に前向きな姿勢を取る。

また、包括的な視点で調査結果を捉え、個別のスコアや不満にとらわれず、パターンや傾向を特定することも大切だ。低い評価を受けた上司の反応として最悪なのは、低い評価をしたのは誰だったのかという犯人探しを始めることで、これにより信頼関係はあっという間に崩れてしまう。

低いスコアから大きな傾向を見出し、問題をより深く理解するため部下から追加で意見を聞けば、上司への信頼とエンゲージメントは急上昇する。

従業員エンゲージメント調査で低いスコアが出ることは、その会社や部署が改善できる部分についての貴重な情報を得られるものであり、管理職はこれに感謝すべきだ。部下がこうしたフィードバックをできるほどリーダーのことを信頼しているという事実を忘れないように。

forbes.com 原文

編集=遠藤宗生

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