レラティビティーは自社開発した3Dプリンター「スターゲート」を使ってロケットを製造している。スターゲートは原材料から飛行準備の整ったロケットをたった60日ほどでつくり出せるという。打ち上げた2段式ロケットのテラン1は同社初のロケットで、最大の収益源になると見込む「テランR」よりもひと回り小さく、おおむねその開発に向けた踏み台という位置づけだ。テラン1は最大約1250キログラムのペイロード(積載物)を地球低軌道に運搬でき、1回の打ち上げ費用は1200万ドル(約16億円)に抑えられている。
より大型のテランRはテラン1よりも約16倍重いペイロードを運ぶことができ、月や火星に宇宙船を送り込むこともできるとうたわれている。レラティビティーはテランRを完全に再利用可能なものにすることも計画する。同社のウェブサイトでは2024年に最初の打ち上げを目指すとしているが、ジョシュ・ブロスト上級副社長によると、テラン1の今回の打ち上げなどから得られたデータしだいで時期は変更される可能性もあるという。
クィルティ・アナリティクスの宇宙産業アナリスト、ケイレブ・ヘンリーは、レラティビティーにとってのテラン1は米SpaceX(スペースX)にとっての「ファルコン1」のようなものだと解説する。「スペースXで言えばファルコン9、レラティビティーの場合はテランRという、商業市場で大きな利益が期待できる大型ロケットの受注獲得競争に乗り出す前に、主要な打ち上げ技術を証明してみせることに目標がある」
ロケット市場はいまがチャンス
テラン1は今回、軌道には乗らなかったが、この結果も見通しを暗くするわけではない。実のところ、打ち上げ時に大気圏内でかかる負荷が最も大きくなる「最大動圧点(max Q)」を通過するという、今回の試験の目標は達成したというのが第1の理由だ。機体が構造上、どこまで耐えられるかを調べる重要なテストに合格したということだ。2つ目の理由として、ロケット業界では初期の打ち上げでの失敗はいたって普通のことだという事情もある。「打ち上げロケットは初期には失敗率が高い。業界ではよく知られたことだ。過去1年にもアストラやアヴィオ、ランドスケープ、MHI(三菱重工)、ヴァージン・オービットなど世界中の企業の新型ロケットが失敗している」(ヘンリー)