画像は、テキサス州オースティンで開催中のイベント「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」からユーチューブでライブ中継された基調講演「Unfold The Universe」で公開されたもので、地球から約1万5000光年離れたウォルフ・ライエ星「WR 124」が捉えられている。この恒星は太陽の30倍の質量を持つため、その寿命は短い。
ウォルフ・ライエ星は、天の川銀河で最も質量の大きい恒星の一種で、これまでに500回しか観測されていない。存在するのは数百万年のみ(宇宙時間にとってはほんの一瞬だ)で、寿命が尽きる時には壮大な超新星爆発を起こすと考えられている。
画像には宇宙ガスのハローと恒星周辺のちりが写っており、撮影にはウェッブ望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)が用いられた。このハローは、地球上の生命を含む現代宇宙の構成要素である重元素から成っている。
NASAゴダード宇宙飛行センターの宇宙物理学者アンバー・ストローン博士は「この美しい画像の中心に見えているのは恒星です」と解説。「恒星は一生の終わりに、その外層を宇宙に向けて放出します。そのちりは宇宙に拡散し、最終的に惑星を形成します。これが地球の成り立ちです」と語った。
NASA、欧州宇宙機関、カナダ宇宙庁が共同運営するウェッブ望遠鏡は、100億ドル(約1兆3000億円)を投じて開発され、赤外線を観測するため可視光線が通過できないちりやガスを通して見ることができる。
ウェッブ望遠鏡の主鏡は、六角形のベリリウム製鏡18枚から成り、金の超薄膜で覆われていることから、赤外線の反射に理想的な材質となっている。集光力はハッブル宇宙望遠鏡の6倍だ。
赤外線を効率よく検出するためには、望遠鏡を極めて低い温度に保つ必要がある。カプトンというポリマーの一種でできた5層のサンシールド(日除け)はテニスコートほどの大きさで、表面の温度は太陽に面した面が約110度、日陰の冷たい面が氷点下約233度だ。層と層の間は真空で、絶縁体の役割を果たしている。
ウェッブ望遠鏡は2021年12月25日のクリスマス当日に打ち上げられ、翌22年2月以降、地球から約160万km(地球から月までの約4倍の距離)離れ太陽の反対側にあるL2(ラグランジュ点2)を周回している。22年7月12日、初めて撮影した画像が公開された。
(forbes.com 原文)