星に初めてスイッチが入った瞬間は「宇宙の夜明け」や「宇宙の再電離」と呼ばれ、宇宙の歴史の中でも特別な時期であり、天文学者たちが究明しようと躍起になっている。「種族I(population 1)」と呼ばれるこれらの星や小さな銀河は、どんなものだったのか?
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)はその答えに近づき、宇宙誕生から約3億2500万年後に存在していた銀河を画像化した。これは素晴らしい成果だが、まだ十分ではない。
だが、世界一感度の高い電波望遠鏡なら、その一歩先へ進み、この「宇宙の夜明け」の姿を見ることができるかもしれない。ただし、この望遠鏡は大部分が「金網」でできている。
南アフリカのカルー砂漠にある電波望遠鏡350基のネットワーク「水素再電離期アレイ(HERA)」は最近、感度が倍増した。電波天文学では、可視光線と同じ電磁放射線の一種である電波を用いて天体を観測する。HERAは「望遠鏡アレイ」と呼ばれる手法で、地表に多数のアンテナを並べ、微弱な電波信号を増幅させて観測を行う。
HERAの新しい検出器は、金網と塩ビパイプ、電柱でできている。「2mの波長にとって、金網は鏡なのです」とカリフォルニア大学バークレー校天文学部の研究員ジョシュア・ディロンは語る。「高度な技術はすべて、バックエンドのスーパーコンピューターにあります」
オンラインで公開され、後にThe Astrophysical Lettersに掲載予定の論文で、ディロン率いる研究チームはアレイの感度を改善した方法を説明している。これにより、ビッグバンから約6億5000万年後に発せられた光をこれまでの2.1倍、約4億5000万年後に発せられた電波を2.6倍の感度で受信できるようになったという。
チームは感度を増したHERAを使い、ビッグバンの約2億年後から約10億年後にかけて進化した中性水素と電離水素の泡の3Dマップを今年中に作成しようとしている。
水素再電離期アレイ(HERA)は350基のアンテナから成り、南アフリカ・カルー砂漠の電波ノイズのない地域に置かれている。(DARA STORER)
研究チームは、初期宇宙で生じた電離水素の泡の痕跡を観測し、宇宙の「暗黒時代」と「夜明け」の境目を特定することを目指している。
初期結果は良好だ。これまでの観測からは、初期の星々と銀河が主に水素とヘリウムから成っていた可能性が示されている。「これは理にかなっています。この時期の宇宙は、他のほとんどの元素が形成される前のものだからです」とディロンは語った。
極めて重要な電離水素の泡を観測するためには、中性水素原子が吸収・放射するものの、電離水素は吸収・放射しない波長の電波を捉える必要がある。この電波はその波長の数値から21cm線(1420MHz)と呼ばれるが、宇宙の膨張を踏まえると、観測する波長はその10倍に当たる約2mとなる。このため、HERAを構成する幅14mのアンテナ群なら、この電波を捉えて検出器に集めることができるはずだ。
観測に成功すれば、宇宙の「子ども時代」の姿を見られることだろう。
(forbes.com 原文)