その概念では、私たちは「変化」を6つのレベルで処理している。なかでも最も影響力が大きいのは、3つの内面的なレベル、すなわち、人としての在り方(コア)および自分自身のアイデンティティ(自己認識)と信念だ。この3つのレベルにおける変化は、行動レベルにおける変化を生み、それにより能力の向上、ひいては環境の変化を生み出していく。
筆者の経験では、楽観主義は、これらの3つのレベルにおいて育むことができる。変化に関するこれらのレベルについては、ブログでより詳しく解説している。
楽観主義はどこからくるのか? 学べるものなのか?
ポジティブ心理学のパイオニアとして知られるマーティン・セリグマン博士が特に深く探求したのが、学習性無力感(learned helplessness)に関する研究だ。学習性無力感とは、長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物が、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象だ。ひらたくいえば、我々のすることは役に立たず、やってみるだけ無駄だと考えることだ。これは、悲観主義的な在り方と言えるだろう。一方で、セリグマン博士の研究では、被験者に対して継続的な課題を繰り返し与えると、それでも最後までやり抜き、それまでとの違いに気がついて解決にたどりつく人がいることがわかった。セリグマン博士はこうした研究の後、「学習性楽観主義(Learned optimism)」を提唱し「楽観主義は、学習とトレーニングで身につけることができる」と主張した。
ただし、楽観主義には、遺伝的な要因も関係していることが明らかになっている。そしてその傾向は、人種や性別に関係なくみられる。さらに、子どもの頃に楽観的だった人は、年をとっても楽観的であることが多い。
アデレード大学の心理学教授エレイン・フォックス博士は、楽観主義と悲観主義を神経科学的に研究した。そしてそれらが、快楽を追求したい欲求(側坐核)と、痛みを避けたい欲求(扁桃体)、および、それらと前頭前野(高度な思考をつかさどる部位)との「対話」に深く根ざしていることを発見した。
フォックス博士はこれを、加速器に喩えて説明している。悲観的な人では(痛みを避けたい)扁桃体がより活発に働いており、痛みを回避しようとして、その働きをさらに加速させる。一方、楽観的な人は(快楽を追求したい)側坐核がより活発に働いており、快楽を求めるためにその働きをさらに加速させる。
フォックス博士はまた、楽観主義が粘り強さと適応力に大きく依存することも明らかにした。どちらもリーダーシップの資質であり、筆者はそれらが学習できるものであることを発見している。ここは重要なところだ。
楽観的な人は、職業的に成功しやすく、うつ病やその他の病気にかかりにくく、さらには長生きする傾向すらある。確かに、生きていれば失望することもあるだろう。しかし、楽観的な人ほど、失望を乗り越えやすく、すばやく立ち直ることができる。
あなたは楽観主義者だろうか?
(forbes.com 原文)