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2023.03.27

和歌山市長が語る、移と衣と食の結構すごい話|クレイ勇輝

クレイ さてこの対談では、まだ名前は知られていないけれども実は日本を支える力になっている「スモール・ジャイアンツ」を紹介しているのですが、和歌山市のスモール・ジャイアンツを挙げていただくとすれば、どういった企業になりますか?

尾花 和歌山市はいくつも挙げられそうです(笑)。まずは「TGC 和歌山 2023」を呼び込む原動力になった鳴海禎造社長の「glafit」さんです。地元出身の鳴海社長が30代で立ち上げた、自転車と電動バイクの機能を合わせたハイブリッドバイクを製造・販売するメーカーです。

ハイブリッドバイクを公道でシームレスに走らせるためには自転車とバイクの間にある法的壁をクリアしなければならなかったのですが、鳴海社長が凄いのは国の「規制のサンドボックス制度(*)」を利用してそれをクリアしたことです。
*規制のサンドボックス制度:新しいビジネスモデルや技術を用いて事業活動を行うとき、現行規制が障壁になる場合がある。その新たな取り組みを実用化、実装可能にするため、事業者から申請を受けた規制官庁認定の下で実証実験を行い、その情報・データから規制の見直しにつなげていく制度。

鳴海社長はモビリティで社会を変えたいという思いがおありでした。地方での暮らしに車は欠かせません。でも高齢になればなるほど運転中の事故リスクは高くなり、社会問題になっていますよね。加えて地方都市は公共交通の廃止路線も増えている。それでも車中心の社会は変わらず、郊外に大型店ができることで市街地はどんどん寂れているわけです。

ハイブリッドバイクという新たな選択肢によって、高齢者だけでなく、人びとの移動の在り方が変わるかもしれません。脱炭素の面からも気軽な移動方法として使うことができますからね。

クレイ 「TGC 和歌山 2023」では丸編みニットの服を着て登場したモデルさんもいました。

尾花 丸編みとはぐるぐると円を描くように筒状に編んでいく方法ですが、その丸編みニット生地の約4割は和歌山県で生産しています。これは全国1位なんです。モデルさんが着ていたのは、この丸編みを得意とするメーカーのひとつで和歌山市にある「丸和ニット」さんの製品でした。

また「島精機製作所」さんが製造する「ホールガーメント」の編み機は3Dプリンターのように1着丸ごと編み上げるニットマシンで、袖や身頃などのパーツを縫い合わせる作り方ではない分、原料の無駄が出ない。だから世界的なアパレルブランドからも高く評価されているんです。

クレイ それは知りませんでした。

尾花 和歌山はものづくりが盛んな土地です。繊維だけでなく化学分野も進んでいて、下水の汚泥やし尿、一般ごみから有機質肥料やメタンガスを精製し、農業や発電に利用しようという会社「ヴァイオス」さんも市内にあります。この会社は農業生産法人も立ち上げて県下の休耕地を買い取り、にんにくやトマトの生産も行っているんです。

クレイ それらは海外に向けて十分発信できる技術ですね。和歌山市には観光以外にもいくつもの魅力があることを知りました。

尾花 観光でいうと、和歌山県は白浜や高野山というイメージが強いんです。でも和歌山市にも御三家のひとつ、紀州徳川家のお膝元として和歌山城があります。他にもイタリアの世界遺産・アマルフィに似ているといわれる雑賀崎エリアが映画のロケ地として使われたり、加太エリアにある無人島「友ヶ島」はアニメの舞台のモデルとなり人気のスポットです。市の中心には雄大な紀ノ川が流れ、山、海、川を一度に楽しめる大変恵まれたまちだと思います。

和歌山市はまだまだいろいろな可能性を秘めていますので、「TGC 和歌山 2023」を機にもっとアピールをしていきたいと思います。

クレイ 今日はありがとうございました。



クレイ勇輝/実業家。2005年、神奈川県の逗子海岸で海の家ライブハウス音霊 OTODAMASEA STUDIOを発足し、音楽ユニット「キマグレン」結成。2008年、NHK紅白歌合戦に出場。今も実業家として様々な分野で活動している。

撮影 = ATSUYUKI SHIMADA

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