東京ガールズコレクションが地方創生とつながるまで|クレイ勇輝

第5回目のゲストは村上範義さん。若い女性から圧倒的な支持を受けているファッションイベント、東京ガールズコレクションを企画・制作してきた、株式会社W TOKYOの代表取締役社長だ。「TGC」と呼ばれて久しいこのイベント開催を待ち望んでいるのは、いまや若者だけではない。人口減少や地域経済の衰退に頭を抱える地方自治体が、地元の活性化を図るための大きな可能性を秘めている「TGC」に熱い視線を寄せているのだ。東京ガールズコレクションの歴史と、地方創生に繋がる取り組みについて話を聞いた。



クレイ勇輝(以下、クレイ
) 連載5回目となる今回は、東京ガールズコレクション(TGC)を企画・制作する「W TOKYO」の村上範義社長にお話を伺います。

TGCといえば、東京で開催するリアルイベント会場には延べ約3万人が集まり、LINEやYouTubeなどのライブ配信でも延べ約800万人以上が視聴する、ファッション界のビッグイベントです。そのTGCが「地方創生」「スモール・ジャイアンツ」とどのような関係があるのか、今日はそこをお聞きしたいと思います。

村上範義(以下、村上) よろしくお願いします。

クレイ ――その本題に入る前に、とても気になっていることがあります。いま「W TOKYO」のオフィスにお邪魔しているんですが、とてもコンパクトですっきりしている印象を受けました。若い世代なら誰もが知っているTGCの運営会社は、大きなビルにオフィスを構えているだろうと想像する人もいるかもしれません。

村上 実は、このオフィスにこそ「W TOKYO」の考えが現れていると思います。我々のビジネスはオフィスの外で生まれ、創られていくものであり、オフィスとはコンテンツ・プロデュース創造の場――あくまでも拠点であればいい。我々はプロデュース集団であり、少数精鋭という意識です。つまり「W TOKYO」を成り立たせているのは人なんです。その、人への投資に繋がる快適性やコミュニケーションの空間作りには重きを置くけれど、無駄に規模を拡大することは考えていないんです。

クレイ 空間がほとんど区切られていませんね。
写真提供:W TOKYO写真提供:W TOKYO

村上 社長室などもあえて作りませんでした。フリーアドレス制を導入していて、部署や年次、肩書きなどの垣根も越え、プロデューサー同士がコミュニケーションを取りやすい環境にしています。ひとつだけこだわっているとすれば、それは神宮前という立地です。

このエリアはファッションやエンターテインメント関係の方々とのアクセスが良く、街が常に進化しています。我々のビジネスにプラスになる刺激が得られるこの地にオフィスを構えることには大きな意味があるんです。

クレイ なるほど。「人」を財産と捉えているところに地方創生に繋がるヒントが隠されていそうですね。

それにしても、TGCは東京で開かれるイベントというイメージがありました。ところが2015年からは北九州や熊本、静岡など、本格的に地方都市でも開催をしていますね。今年も2月11日には和歌山市で「TGC和歌山」、5月27日には岩手県の一関市で「TGC teen ICHINOSEKI 2023」(*)が開かれることも発表されています。この転換に、何か理由はあったのでしょうか。
*「TGC teen」:TGCが2019年夏よりプロデュースしているティーン世代向けのイベント。一関市での開催が、TGC teen初の地方創生プロジェクトとなる。

村上 毎年、春と秋に東京で開催するTGCは、この3月で36回目となります。その間、F1層と呼ばれる20歳から34歳までの多くの女性から認知されるイベントになりました。いまでは「TGC」という呼び方がすっかり定着していますが、これは東京ガールズコレクションに関心を持った人たちの間で、いつのまにか広まったんです。でもそれこそがTGCがブランドとして確立した証です。いまやTGCは単なるファッションイベントではない、プラットフォーマーとしての役割を担っています。そこに、地方創生とのつながりが見出されてきたんです。
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文 = 児玉 也一、撮影 = 岡田清孝

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