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2023.03.27

和歌山市長が語る、移と衣と食の結構すごい話|クレイ勇輝

クレイ そもそも「TGCを和歌山市で」という話が持ち上がったとき、市長はどのように感じましたか?

尾花 一言で言えば、「和歌山市で実現できるのだろうか」と思いました。

1年ちょっとという非常に短い期間での話ということもあったのですが、費用面での課題もありました。スポンサーは集まるのだろうか、それから公共予算を投じることになれば、それに見合った効果を得ることはできるのだろうか、と。公金を使うということは、必ず定量的にどれほどの経済効果が期待できるのかを訊かれることになります。その数値をもとに議会を説得することになるわけです。

TGCの効果は、短期的に捉えるなら「和歌山市をPRできる」と言えると思います。長期的にはたとえば、女性や子供たちに向けて、自分が住むまちでも夢をかなえられる、誇りを持てるんだ、そう思えるきっかけを与えられる場になるとも言えます。でもそういうものはなかなか数字にはできないんですよね。その部分の難しさはありました。

ただ、TGCの強みは有名なモデルさんやアーティストの方が多数出演し、和歌山市の良さを一気に発信していただけることです。県外からも人が集まるので、最終的には約10億円の経済効果が得られるのではないか、そういう結論に達したわけです。
おばなまさひろ/1953年生まれ。80年、和歌山県職員採用。2008年4月、県土整備部道路局長。2012年、県土整備部長。2013年11月に和歌山県庁を退職。2014年8月、和歌山市長就任。おばなまさひろ/1953年生まれ。80年、和歌山県職員採用。2008年4月、県土整備部道路局長。2012年、県土整備部長。2013年11月に和歌山県庁を退職。2014年8月、和歌山市長就任。

クレイ
 そうやって開催に向けて動き出したわけですが、そのなかで見えたものはありましたか。

尾花 和歌山のことを愛している、どうにかして地元を盛り上げたいと考えている人がこれだけいるんだ、そういうことを感じました。コロナ禍ということもあったかもしれませんが、ふるさとに誇りを持ちたい、大事にしたいという思いや地元の良さを見直そうよ、そういう思いを感じました。

――これはコロナ禍とは関係ないかもしれないけれど、子供たちの社会への参加意識が高まっているように感じます。

小学生、中学生が自分の意見を発表する大会があるのですが、そこで「自分のまちを防災の強い町にするんだ」とまちづくりに関心を持ったり、環境問題をテーマにする子が増えてきたと思います。以前は「将来は〇〇になりたい」というような、自分や友達のことを題材にすることが多かったと思うのですが――。恐らく、環境問題や戦争、コロナ禍と社会的な問題が自分たちの生活に入り込んでいて、やりたいことが変わってきているのではないでしょうか。

クレイ 若者は、高校卒業後に進学、就職で都市部へ行ってしまいます。和歌山市もその問題を抱えていると思いますが、どう対処されていますか?

尾花
 大学を増やすことで若い人に定住してもらおうと取り組んできました。そのために必要な学部は何だろう、と。

地方で求人倍率が高い仕事、地域社会に不可欠な仕事から考えると、看護師、保育士、薬剤師、理学療法士などがあります。そういった職に就くための学ぶ環境がなかったので、県と和歌山市の誘致で市内に5つの大学を開学しました。集まるのは女性の学生さんが多いのですが、地方は女性がいなければ成り立ちません。これからは女性の力が不可欠だと感じていますので、「TGC 和歌山 2023」はぴったりだったわけです。

自分たちの住むまちにTGCが来る。故郷である和歌山市に居ても楽しいこと、胸を張れることがあるんだ、そう思えるきっかけになってもらえたら嬉しいのですが。
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撮影 = ATSUYUKI SHIMADA

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