ビジネス

2023.04.04

宮崎の「干し椎茸」が米アマゾンで人気爆発、ドバイ富裕層にも

干し椎茸の生産・販売・加工を手がける椎茸屋「杉本商店」杉本和英社長(写真提供:JETRO)

大手食品ディストリビューターとつながる

でも実は、次回のアメリカ出張でようやく、米国内に6つの巨大ウェアハウスを持つ、メリーランド州の大手食品ディストリビューターCEOと会うことになりました。彼らが「SUGIMOTO」の商品を、どういう戦略で売るかという話を聞いてきます。 

つまり初めて、日系でなく、米系のスーパーである問屋企業との取引きへの掛け橋がかかるわけです。これで、ECだけでなく物理店舗でも、現地の日本人ではなく、米国人、その他を顧客にすることができそうです。

実は今回の縁は、去年、農水省後援の、日本食材のプロモーションを目的にしたロサンゼルスの食のイベントに参加した時、TIGER CORPORATION U.S.A(タイガー魔法瓶米国現地法人)の松本社長(KENTARO MATSUMOTO氏)がつないでくれました。

1日で1800食もの試食が出たほど盛況だったそのイベントで松本社長とお話ししたとき、「杉本さん、この椎茸、とてもおいしいけれど、どうやって売ろうと思っているの?」と聞かれた。そこで、「実は僕は椎茸を、アメリカの食のメインストリームに入れたいんです。しかし、販路がなかなか開けなくて」と打ち明けました。

そうしたら2日後くらいに電話があって、ご紹介いただいたのがその食品流通のディストリビューターだった、というわけです。

なぜ「タイガー魔法瓶」だったのかですが、 実はそのディストリビューターはタイ米を全米に卸していた。ところがお米は炊かないと食べられない。

もちろん、ふつう、アメリカ人の家庭に炊飯器はありません。でも、本当に健康に意識の高いアメリカ人は、米を食べるために炊飯器を買っているそうなんです。そのディストリビューターは全米で1番、タイガーの炊飯器を売っている企業だったんですね。ご縁です。

高騰する人件費を払うために売るものを値上げ、でも──

現状、米国企業としてはなんとかして利益を上げないと、高騰する人件費を払えない状態になっています。

今まで僕らの話には、日系系のスーパーへの卸問屋同様、中国系とかメキシコ系の人たちは耳を貸さなかった。 理由も同じで、やはり需要のある安い商品を大量に持っているので、「高くておいしい」は不要だったんです。

しかし時代の潮目が変わってきて、従来売っていたものではもう利益が取れない。今、カリフォルニアの最低賃金は、小規模事業者で16ドル50セントぐらいはするはずですよ。だったら、もう売価を上げていくしかない。

しかし、商品は据え置いて、値段だけ上げる、には限度があります。だから、高くていいものを輸入して、高く売ろう、という発想転換が起きてきたんです。

松本社長が紹介してくれたディストリビューターも、今まではタイ製品、タイの食材を輸入して、全米に供給することで大きくなってきた会社でした。しかし、タイのものだけでは十分な利益は取れないから、今後は日本の食材を高い値段で流通させようじゃないか、とチームを作ったところだったというのです。縁と、タイミングに恵まれましたね。
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構成=石井節子

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