国内

2023.03.24

「ねこの寿命30歳」を目指す 病気検知トイレのこだわりと進化

提供=トレッタキャッツ

医療業界から未経験のペット業界へ参入した理由

トレッタを手掛ける堀のキャリアは、意外にもペット業界とは違う場所でスタートしている。

大学卒業後はNTTデータで病院情報のシステム開発に約10年携わり、その後、ジョンソン・エンド・ジョンソンで病院経営コンサルティングに従事。その後、保護犬猫のウェブサイトや犬の歯磨きサービスなど数回の起業と事業売却を経て、現在のトレッタキャッツを創業した。

トレッタキャッツ代表の堀宏治 

なぜ、医療業界から全くの異業界であるペット領域へ参入したのか。きっかけは、2011年に起こった東日本大震災だという。
 
「津波や地震でペットが飼い主を失ったり、避難所や復興住宅に連れていけず放置されたペットたちが殺処分されているという話をニュースで知り、強い憤りと悲しみを覚えました。
 
そこからペット問題に関心を持つようになり、日本で初めて殺処分ゼロを達成したという熊本市動物愛護センターへ足を運んだんです。そのとき、殺処分に使われていた機械を見学したのですが、強烈に人のエゴを感じたと同時に『すべてのペットを幸せにする事業をやりたい』と思った。これが私の原動力です」

猫ファーストなものづくり

「すべてのペットを幸せにしたい」。堀の想いは、プロダクトにも現れている。
 
「トレッタの開発中、『複数の猫をどう識別するか』に悩みました。猫の平均飼育数は1.73匹といわれていて、多頭飼いのお家が多いんです。はじめはICチップを使うという案もありましたが、猫を飼っているスタッフと『猫の負担を考えると、チップ付きの首輪は着けさせたくないね』という結論になりました。
 
猫に今まで通りの生活をしてもらいながら、何の負担もなく健康管理をするにはどうしたらいいか?と考えて、顔認識カメラを開発しました。他にもトイレの大きさや猫砂の形状なども、猫の現状の生活を維持したまま使えるようこだわっています」
 
ペットビジネスは活況を呈しているが、フードのようにすでに多くの競合が存在する領域もあり、軌道に乗せるのは簡単ではない。大企業でも撤退するケースがあるが、スタートアップのようにペット好きな社員でチームを構成することができず、ペット目線での事業作りが難しいという側面もあるだろう。実際、ペット専業の上場企業は少ない。

そうしたなか、堀はどう事業を成り立たせてきたのだろうか。
 
特に意思決定をするときには、メンバーに対して次の2つを意識することを伝えているという。
 
一つは「キャットファーストかどうか」、もう一つは「利益が出るかどうか」だ。
次ページ > 2つの軸を追求し、猫砂の販売を中止

文=小野瀬わかな 編集=露原直人

タグ:

連載

人とペットのウェルビーイング

ForbesBrandVoice

人気記事