こうした経験に基づき、メノンは2020年にバター・ペイメンツを立ち上げた。景気の悪化で多くの企業の収益が悪化する中、創業3年の同社は、事業基盤を固めつつある。1月、Norwest Venture Partnersが主導したシリーズAラウンドで2150万ドル(約28億円)を調達。このラウンドには、他にAtomicが参加した。これを機に、Norwest Venture Partnersのパートナーであるエド・イップ(Ed Yip)が取締役に就任した。関係者によると、このラウンドにおけるバター・ペイメンツの評価額は約1億ドルに達したという。
同社のCEOを務めるメノンは、フォーブスの「30アンダー30」の企業向けテクノロジー部門の2023年版に選出された。創業当初から成功を確信し、「あらゆるサブスクリプション企業が同じ問題に直面している」と考えていた。しかし、当時はこの問題の存在を認識している人はほとんどおらず、同社のインキュベーターのAtomicのパートナーたちも「意図しない解約」という現象を把握していなかったという。
バター・ペイメンツは、機械学習を用いたカスタムメイドのモデルを用い、決済インフラが原因で生じる問題を特定する。メノンによると、エンゲージメントの高いユーザーであっても、意図せず解約してしまうことが起き得るという。これらのユーザーの75%は、競合他社の製品に乗り換えたり、技術的なバグによって再契約できないために、離脱してしまう。
サブスクリプションの解約理由は、顧客層によって異なるため、企業によってさまざまだ。例えば、インドネシアでは大半の人が銀行口座を持っておらず、それに対応しない企業が機会損失を起こす場合がある。他にも、時差の問題や、郵便番号などのデータの不一致により、契約が突然解約される場合がある。「決済が処理できない理由は一つではない。だからこそ、われわれのソリューションが必要になる」とメノンは言う。