日本の飲食店初の「B Corp」 世界基準のクッキーブランドとは

田中友梨

制限があるからこそ可能性が広がる

では、卵、バター、牛乳といったクッキーの基本となる原材料が使えない中で、アメリカンクッキーならではのおいしさを、どのように実現しているのか。

試作品を作り始めた2019年夏頃は、まだ国内にオーツミルクが流通しておらず、乳製品の代用となるのはココナッツミルクか豆乳だった。そうすると、ココナッツミルクを入れたクッキーはココナッツ味になってしまい、豆乳は豆っぽい味になってしまう。その風味を抑えるために、ココアや抹茶、スパイスを多用したり、味噌を入れてみたりと、様々な材料の組み合わせを考えた。

「原材料の選び方しだいで風味がかなり変わるのが、プラントベースのお菓子の面白さでもあります。油は米油を使っていますが、米の種類もたくさんありますし、米油以外にもごま油もオリーブオイルも菜種油も使えます。ミルクも、油脂が多くて濃厚なココナッツミルクを使うか、軽い味わいのオーツミルクを使うかで、風味が大きく異なる。組み合わせによって、風味の可能性が広がるんです」

そうした試行錯誤の結果、イメージ通りのアメリカンクッキーが完成した。

現在、製造は神保町のセントラルキッチンと一部店舗で行っている。期間限定商品など新商品のアイデアは、アルバイトを含む店舗スタッフからも募集。例えば、バレンタイン時期の小伝馬町店では、考案したスタッフの名前が入ったクッキーを販売した。



また、3月1日には東日本橋に新店をオープン。イートインスペースが広いこちらの店舗では、初めての食事メニューとして、プラントベースの「フムス」や「ミネストローネ」なども展開している。朝昼晩とプラントベースの食事ができる場所になった。

「より人々の食をプラントベースに代替していくことや客単価を上げていくことも課題のひとつでしたので、かねてから食事の提供は考えていました。今後はさらにメニューを増やしていきたいです」

B Corp認証取得でアメリカ進出へ

「ovgo Baker」はこの春、アメリカンクッキーの本場ニューヨークに進出する。

それに先駆け、2023年1月には、環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証制度「B Corporation認証(B Corp)」を取得した。日本では16社目で、飲食店としては初となる。

B Corpは、アメリカの非営利団体B-Labが定めた基準(ガバナンス、社員、コミュニティ、環境、顧客の5つの指標)を満たした企業が取得を認められるグローバル認証だ。

OVGOは、B Corpの取得にあたって、製造するクッキーの原材料調達から販売・廃棄までの温室効果ガス排出量を計測。ovgo Bakerのチョコレートチップクッキーは一般的なチョコレートチップクッキーと比較して、温室効果ガス排出量を約84%も削減できていることがわかった。



プラントベースにこだわるOVGOは、創業時からB Corpの取得を目指してきた。ただ、その取得までには2年を要した。申請に向けた社内制度や、申請後の複数回の面談や、審査順の待機に時間がかかったからだ。

「アメリカなどでサステナブルな会社として事業活動を行うときに、お墨付きを得たので、とてもやりやすくなりました。脱炭素の視点でも、プラントベースの重要性について、数値的な裏付けができ、自信につながりました」

>>第3回 クッキーブランド「ovgo Baker」原宿店 Z世代が集まる仕掛けとは



【連載】OVGOの軌跡

第1回 三井物産を辞めクッキー屋さんに 「ovgo Baker」はこう誕生した
第2回 日本の飲食店初の「B Corp」 世界基準のクッキーブランドとは(本記事)
第3回 クッキーブランド「ovgo Baker」原宿店 Z世代が集まる仕掛けとは
第4回 日本発アメリカンクッキーブランドがNYに進出。その勝算は?
第5回 日本発「アメリカンクッキー」ブランドの資金調達 投資家は何を評価した?

文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨 撮影=山田大輔

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