起業家

2023.04.05

日本発「アメリカンクッキー」ブランドの資金調達 投資家は何を評価した?

3月1日、東日本橋にオープンしたovgo Baker Edo St. EAST

プラントベースにこだわったアメリカンクッキーブランドのovgo Baker(OVGO社)。2020年の起業からニューヨーク進出までの軌跡を、過去4回の連載で辿ってきた。

OVGOは今年1月、インクルージョン・ジャパンのICJ2号ファンドやMBKF(三井物産出身者による合同会社)、個人投資家7人から資金調達を実施。その累計調達額は1.3億円となった。

「OVGOの軌跡」最終回となる今回は、新規投資家となったインクルージョン・ジャパンの吉沢康弘に、同社の強みや将来性について聞く。

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三井物産を辞めクッキー屋さんに 「ovgo Baker」はこう誕生した





——OVGO社との出会いは?

ovgo Bakerは代表の溝渕由樹さんが、友人たちを巻き込んで立ち上げたクッキーブランドです。私がたまたま一時帰国していたときに、信頼している人物から「すごいベンチャーがある」と、紹介されたがきっかけで彼女たちのことを知りました。

ovgo Bakerの溝渕由樹

話を聞いていると、売上を伸ばしながら、銀行から借り入れができるくらいまで瞬く間に会社を成長させてきたということで、「相当実力があるな、成功するだろう」とピンときました。創業からわずか2年なのに、きちんと売上をあげて、その資金をもとに次の店舗を出しているんですね。地に足がついた経営です。

また、以前にVCからの投資契約を、契約内容が合わないという理由で断ったこともあるようで、とても軸がしっかりしている経営者だなと思います。そういった数字への強さは、溝渕さんが三井物産の法務部出身ということも関係しているのかもしれません。

——出資の決め手は?

その後、メッセージをやり取りしながら出資を検討するなかで、たまたま知り合いのバーで溝渕さんにお会いする機会があって。その時、「要はどういうことがやりたいのか」と聞いたんです。

すると「“プラントベースだから、環境に優しいから、食べた方がいいですよ”ではなく、ただ単に、“おいしくてかわいいから”まずみんな手に取って食べてもらいたい」という答えが返ってきました。

つまり、おいしいから毎日食べようと思えて、食べているうちに「これってプラントベースなのか」と意識するという流れです。元々意識していなかった人が“おいしさ”をきっかけに、サステナブルな活動に参加できる。そのきっかけをつくるブランド、という発想が素晴らしいなと思いました。

実は、友人から紹介してもらった段階で前向きに出資を検討していて「あとはどうお金を出して、どうお役に立てるかだな」と考えていました。当社では2〜3年前から、飲食の領域でも「環境への配慮」が大きなテーマになると分析していました。世界ではすでに流れがきているので、日本でも色々と投資先を探している状況で。

そんな中で溝渕さんの言葉を聞いて、“SDGsの達成に寄与する、新しい事業機会に取り組むベンチャー企業の株式への投資“を掲げるICJ2号ファンドの方向性とも一致するなと、ピースがはまりました。
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文=田中友梨

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