何年も前から、日本の地銀の利益はゼロ金利や少子高齢化の影響で細ってきている。政府は破綻回避のために地銀の経営統合を促し、地銀側にはコスト削減やバランスシートの強化を求める一方、合併の見返りに日銀への預金に追加の利息を支払うといったインセンティブも提供している。
だが、こうした地銀再編はなかなか進んでいない。世界の投資家のなかには日銀が量的緩和政策のUターンに踏み切ることに賭けている機関もあるだけに、これは日銀にとっても悩ましい問題だ。「裸で泳いでいる」地銀はないか、それを見極めるのが植田にとって大きな課題になるだろう。
脆弱な地銀はシステミックリスクを招きかねないのに加え、日銀の流動性も枯渇するおそれがある。逆に、より大きく、強固で、自信つけた地銀は貸し出しを増やし、日銀の火力を高めてくれるかもしれない。
もし岸田文雄首相に日本の金融システムを安定化させ、日本のエンジンをあらためて最適化する計画があるのなら、いまこそ世界の投資家に知らせる絶好の機会だと思われる。現状に甘んじれば、より合理的な金融政策を策定しようという植田新総裁の意欲を損なうことになるだろう。
海を隔てた米国で起きたSVBの破綻は、自民党と日銀に、日本経済を正常化させる時が来たと告げる警鐘になった。裸の真実とは痛いものだ。
(forbes.com 原文)