100周年を迎えた「アクリス」に見る、ブランドと不易流行

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アクリスは一貫して、「Woman with Purpose」をテーマに掲げている。意志のある女性、とでも言うべきか。その場所が職場であれ、社交の場であれ、果たすべき役割を自覚し、そのために装う女性たちだ。とはいえ、スーツやドレスなどONのスタイルばかりではなく、彼女たちがくつろいだ時間を過ごすための上質なOFFのスタイルも多く用意されている。

アルベルト・クリームラーはアクリスの100年と、自身がクリエイティブ・ディレクターに就任しての40年をこのように振り返る。

創業者である祖母、父から3代目として「アクリス」のクリエイションを継承したアルベルト・クリームラー。ビジネス面は実弟であるピーター・クリームラーが管掌している。

創業者である祖母、父から3代目としてアクリスのクリエイションを継承したアルベルト・クリームラー。ビジネス面は実弟であるピーター・クリームラーが管掌している。

「100年前、祖母のアリスは、第一次世界大戦が終わった直後の非常に困難な時代において、地元の名産であるザンクト・ガレン エンブロイダリーを使ったエプロンを、地元の女性たちのために作ることから始めました。今でいうスタートアップカンパニー、これがアクリスの始まりです。

アリスは同時に女性たちに自らの工房で職も提供していました。彼女はビジネスを拡大していく中で、女性の存在を定義し、カリスマ性を高めるために取り組んでいました。

それは、3代目である今日の私の使命でもあります。違いを作り、変化を生み出すことに邁進し、自身の信念と確固たる主張を持つ。そんな目的を持つ女性のために服をデザインしています。

このような女性は私がクリエイティブ ディレクターに就任した40年前から数多く存在し、今日も変わらず存在しています。いや、私の祖母の時代、つまり100年前から存在していたにちがいありません。それは年齢、時代によって変化するものではありません」
 「アクリス」が創業以来本拠地を構えるスイス北東部の街、ザンクト・ガレン

アクリスが創業以来本拠地を構えるスイス北東部の街、ザンクト・ガレン

たしかに、意志(目的)のある女性は40年前、100年前にも変わらず存在しただろう。しかし、その女性をとりまくライフスタイルは大きく変わってきた。女性が男性に肩を並べようと社会参画に挑む時代から、男女平等であることを前提に、より多様な価値観をもって日々を楽しむ女性像への変遷だ。

たとえば私、いまこの原稿をワーケーション先の軽井沢で書いているが、午後には東京へ戻り、銀座で打ち合わせをしたのちに、夕食は恵比寿で友人たちと四川料理を楽しむ予定だ。1日のうちでいくつも異なるシチュエーションをこなすための服装とはどんなものがふさわしいのか? それは100年前、40年前には考えなくてよかったことだろう。

ちなみにアクリスでは裾や袖を取り外したり丈を変えたりすることで1着をさまざまに着まわせるジャケットやコートドレスも以前から発表しており、オフィスでの勤務後にパーティ出席など多彩なシチュエーションをもつ「Woman with Purpose」たちに支持されていることも付記しておく。
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文=秋山 都

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