今後はアメリカ、オーストラリア、南アフリカ共和国、イギリスへ巡回予定だが、まず世界初のお披露目となった日本会場で、ヴ―ヴ・クリコCEOのジャン=マルク・ギャロ氏に話を聞いた。
━━この企画展の見どころを教えてください。
まず、ヴ―ヴ・クリコという名前の由来から説明させてください。フランス語でヴ―ヴとは未亡人の意味。つまりヴ―ヴ・クリコとはクリコ未亡人ということなんです。1805年に夫を亡くし、27歳にしてメゾンを継承することを決意したマダム・クリコがブランドに「ヴーヴ(未亡人)」の名を冠したことからヴ―ヴ・クリコは誕生しました。
1805年といえば、ナポレオンが第一次帝政を執った翌年。女性がメゾンを率いるには、まだまだ大きな障壁があった時代です。しかし、彼女はそんな壁を打ち破り、旺盛な行動力とアイデアでビジネスを成功させました。
たとえばそれまでニワトコの実で色をつけていたロゼ・シャンパーニュを赤ワインとのブレンドから造るという画期的な製法を発明したり、単一年のブドウからつくるヴィンテージ・シャンパーニュを最初に造ったのも、当時禁止されていたロシアへの輸出を果敢に行ったのもマダム・クリコ。つまり彼女は偉大なるイノベーターでもあったというわけです。
そんなマダム・クリコに敬意を表し、今回の企画展はキュレーターとデザイナー、アーティストたちのすべてが女性によって構成されています。まず特筆すべきはヴーヴ・クリコの歴史や哲学を、現代に生きる女性アーティストたちがコンテンポラリーに表現した作品の数々。
たとえば草間彌生ほか7名の女性アーティストが描くマダム・クリコの肖像画。また、マダム・クリコによる革新的なイノベーションをテーマに、3名のクリエイターが作品に仕上げてくれました。ヴ―ヴ・クリコの歴史と伝統が、現代アーティストによって再解釈される、そのミックス&マッチが最大の見どころだと言えるでしょう。
これは、私たちヴ―ヴ・クリコが過去のレガシーに頼ることなく、常に現在を生きている、未来を見つめているシャンパーニュメゾンであるというスタンスの表明であるとも言えます。