ファッション

2023.03.16 13:30

走り出した「ランニングシューズのサブスク」 On創業者に聞く成長の手応え

実際ユーザーにかかる負担は少ないものの「リサイクル率を上げるために、そのプロセスをさらに簡略化したい」とコペッティ氏は意気込む。また、地球環境に配慮したOnのCyclonをより多くの人々に知ってもらうために、インセンティブ制度のような仕組みを導入することの有効性も現在検討しているようだ。

プロからの支持がOnの成長を支えた

スポーツシューズ・アパレルの業界には世界的に有名なブランドがいくつもある。2010年に創業した若いブランドであるOnが、偉大なブランドと競合しながら独自に立ち位置を築けた背景をコペッティ氏は次のように振り返った。

「スイスはとても小さな国ですが、私たちは創業の『DAY1』から海外に展開するブランドになりたいという強い意志を持っていました。製品を通じて思いが伝わり、結果として世界のエリートランナーから支持をいただけたことは幸運でした。私を含む3名の創業者が『自分たちが本当にほしいシューズを作る』という意気込みを持ちながら、品質の高いものづくりにこだわっています。私たちのコンセプトが世界中で多くのファンに受け入れられていることに感謝しています」

コンピューターによる有限要素解析(FEA)の技術で、CloudTecをさらに精ちに調整したCloudTec Phaseを採用した新製品「Cloudsurfer」コンピューターによる有限要素解析(FEA)の技術で、CloudTecをさらに精ちに調整したCloudTec Phaseを採用した新製品「Cloudsurfer」

Onは創業から13年間に渡り毎年約50%の成長を続けている。現在最も大きなマーケットは北米だが、日本を含むアジアでのビジネスが伸び盛りだという。

近年はThe On Athletics Club(OAC)を立ち上げ、プロフェッショナルとして活躍する陸上競技アスリートのトレーニングや健康管理を支えている。OACのベースは北米コロラド州のボールダー、欧州はOnの本拠地であるスイスのサンモリッツにあるが、この春にはオーストラリアにアジア・オセアニア地域として初のベースを広げた。

アスリートがプロフェッショナルとして成長を続けるためには時間をかけたトレーニングとノウハウの蓄積が必要になる。ところがテニスや野球と違って、陸上競技はプロのアスリートがあまり「稼げる」スポーツではないとコペッティ氏は語る。

「スポンサーを見つけることができても、今度は大会に数多く出場しなければならず、無理にトレーニングを重ねる選手もいます。引いては怪我のリスクも高くなります。私たちはプロのアスリートと長期的な契約を結び、息長く支援をするためにOACを設立しました。現在はトライアスロン競技に携わるスイスのオリンピックメダリスト、ニコラ・スピリグ氏のほか、世界の有望なアスリートがOACに参加しています」
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編集=安井克至、写真=落合明人

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