海外

2023.03.18

スタンフォード卒業のVCが語る 仕事で活きる授業の数々

中安杏奈さん

──医師からのMBA進学、VCになるまでの経緯を教えてください。

大学卒業後は臨床医として3年半働きました。やりがいを感じていた一方、医学生の頃から「色々な人を繋いでヘルスケア業界をより良くしていきたい」という想いを抱いていて、いち若手臨床医としてできることの限界を感じていたんです。そこで、ビジネス面での可能性を求めてスタンフォードMBAに進学しました。

在学中は、ヘルスケアに投資しているPEファンドやVCでインターンしたり、授業の一環で起業案を練ったりといった機会に恵まれました。そうした経験を通じていろいろな人やビジネスを繋いで業界を良くする仕事がしたいという想いが一層深まり、卒業後はご縁があったシリコンバレーに拠点を置くSozo Venturesに入社しました。また、Portfoliaという女性をスタートアップ投資に巻き込むことをミッションとするファンドでもパートナーを務めています。

──将来の展望を教えてください。

ヘルスケア業界を変えるイノベーションが世界に広がっていくことに貢献したいと考えています。特に、日本の既存のヘルスケア企業・病院などのイノベーション推進にも積極的に関わることができればと考えています。

その一環として、ヘルスケアイノベーションに取り組む人同士が気軽に繋がり合うコミュニティJapan Healthcare Innovation Hubを2022年8月に立ち上げました。現在、約800人が所属しており、勉強会や情報交換をしたりしています。

スタンフォードのネットワークの話にも繋がりますが、新しいことを推進するには人が繋がり助け合うことが大事です。投資家としてキャリアを積んでいきながら、このコミュニティも含めヘルスケアのエコシステム全体の発展に貢献したいと考えています。

取材後記

スタンフォード大学では多くのピッチコンテストが開催されています。見に行くたびにそのレベルの高さに驚きます。ビジネスプランの本格的さ(多くの場合、プロダクトの初期検証がなされた段階でピッチに出てきます)もさることながら、プレゼンテーションの上手さに驚くのです。

ちょっとしたパーティーでも、立ち話であっという間に魅了される学生が多くいます。「単なる文化差」と思っていたのですが、その裏には、「ソフトスキル」を伝達可能な知識・技能として扱う、スタンフォード大学の教育があることに気づかされました。

日本でもソフトスキルの教育が必要になってくるでしょう。グローバルで戦おうとする企業の人材育成では待ったなしと、中安さんの話を聞いて確信しました。帰国して私が取り組みたい教育テーマです。

※この記事はジャーナリスト尾川真一(フルブライト奨学生)とともに取材しました。
 

中安杏奈(なかやす・あんな)◎山口県生まれ、小中学校を米国で過ごす。2017年東京大学医学部を卒業後、日本赤十字社医療センターにて初期研修医・産婦人科医として勤務。日赤では臨床の傍ら医師の働き方改革の研究や働く女性向けのヘルスケアセミナーの開催などに取り組む。その後、ヘルスケアにより幅広く貢献したいという想いでスタンフォード大学MBAプログラムに留学し2022年に卒業。現在は日米での知見を生かしながらSozo Venturesのヘルスケア投資戦略を担うほか、女性による女性のためのベンチャーファンドPortfoliaでLead Partnerを務める。(所属は取材当時のもの)

文=芦澤美智子、尾川真一 編集=露原直人

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