サマータイムは米国で「デイライト・セービング・タイム(日光節約時間)」と呼ばれ、ハワイとアリゾナの両州を除く全土で導入されている。時計を春に1時間進め、秋に1時間戻すことで、日照時間を有効活用し、エネルギーを節約することが目的だ。
過去の研究からは、米国人はサマータイム開始時に平均40分の睡眠時間を失うことが示されている。この「睡眠負債」は、秋にサマータイムが終了しても解消されないとみられている。
睡眠習慣の阻害以外にも、朝夕に浴びる日光の量が減ることで体内時計が乱れ、体の自然なリズムが崩れるという問題もある。サマータイム開始直後には、自動車の死亡事故や、病院への緊急搬送、心臓発作、脳卒中、医療機関の受診取りやめが増加。さらに、サマータイムが労災事故や自殺の増加に関連していることを示すデータもある。
長期的な影響として、サマータイムにより肥満や糖尿病、高血圧、うつ病のリスクが高まるほか、持病が悪化する恐れがあることも示されている。特に、うつ病や双極性障害、不安症などの気分障害は、睡眠の阻害による影響を受けやすい。
睡眠専門家はサマータイムに強く反対している。米睡眠学会は2020年、サマータイムにより体内時計が環境と同期しなくなることで「健康と公共の安全に関する甚大な影響」を生むとの公式見解を出した。
米上院は2022年、年2回の時刻変更を廃止し、夏時間を恒久化する法案を異例の全会一致で可決した。だが、下院は法案をめぐり紛糾しており、どの時刻を標準とするかで意見が割れていると伝えられている。上院議員らは今月、法案を議会に再提出した。
一方の米睡眠学界は時刻の統一には賛成しつつも、夏時間の恒久化には反対。時計を進め、戻すことはいずれも有害であるものの、夏時間への移行時の弊害のほうががより大きいことを示す研究結果があるとして、標準時の恒久化が最善だとしている。
世論調査では、米国人の過半数がサマータイム制度を嫌っていることが示されているが、代わりに導入すべき制度については意見が割れている。
(forbes.com 原文)