健康

2023.03.07

米国で「産みたくない」女性が増加 コロナ禍の収入減少が影響

避妊薬を持つ女性(Getty Images)

米国では新型コロナウイルスのパンデミック発生後、妊娠を希望しない女性が増加したことを示す研究結果が発表された。

生殖に関するウェルビーイングの実現を目指すカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究プログラム「Advancing New Standards in Reproductive Health(ANSIRH)」は2020年7月と2021年1月、米国で暮らす18~45歳の女性2000人以上を対象に調査を実施した。

その結果、1回目の調査では44%が、「パンデミックは妊娠を希望する考えに影響を及ぼしていない」と答えたという。一方、「先送りする」とした人、「妊娠を望まなくなった」と回答した人はそれぞれ28%、23%。反対に「子どもが欲しいと思うようになった」と答えた人が、5%だった。

また、1回目の調査で「妊娠に対する考え方は変化していない」と答えた女性たちには、年齢が高い、白人、パートナーと同居していない、子どもがいない、または2人以上いるといった傾向があった。パンデミックによる経済的なダメージや、感染拡大を抑えるための行動制限の影響を受けていなかった人が、その多くを占めていたとみられる。

初回の調査で「子どもを持ちたい気持ちが低下した」と答えた女性の68%は、半年後に行った2回目の調査でも、同じ考えだと回答した。全体として、どちらの調査でもおよそ半数が、「子どもを持つ可能性は低い」、または「先送りする可能性が高い」と答えている。

このように考えている女性たちは、主に年齢が低く、有色人種で、子どもが1人おり、収入の損失を経験した人だった。つまり、パンデミックの影響で収入を失った女性には、妊娠を避けたり遅らせたりする傾向があると考えられる。ただ、所得水準と出産に関する考え方の変化の間に関連性は示されなかった。

「中絶禁止」の余波

研究結果をまとめたANSIRHのデータアナリストは、妊娠を希望する女性が減少したことにより、避妊薬や中絶のニーズが高まっていると指摘している。

妊娠に対する女性たちの意識の変化は、経口妊娠中絶薬へのアクセスが絶たれることのリスクを一層大きなものにしている。

米国では現在、中絶反対派が訴訟を起こしたことを受け、テキサス州の連邦地裁が、経口妊娠中絶薬「ミフェプリストン(mifepristone)」の承認取り消しについて検討を進めている。

米国ではおよそ20年前から、中絶の半数近くがミフェプリストンなどの中絶薬によって行われてきた。米食品医薬品局(FDA)が2000年に承認したこの薬は、流産した場合に医療機関で受ける処置などにも使用されている。

連邦最高裁は昨年、妊娠中絶を女性の権利と認めた「ロー対ウェイド」判決を覆しており、すでに多くの女性たちが妊娠・出産に関する計画に大きな影響を受けている。

パンデミックによって、多くの女性が妊娠や出産に対する考えを変えるなか、経口中絶薬の使用が制限されることになれば、多くの女性たちはさらに大きな問題に直面することになる。

前出のアナリストは、ミフェプリストンの使用禁止をはじめ、中絶医療をより困難なものにすることは、「女性たちが自身のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康とその権利)を自らコントロールし、将来について決断することを難しくするだけだ」と述べている。

Forbes.com 原文

編集=木内涼子

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